第18話 王子の義務と王の重荷
ローカスの丁寧な声が引き金だった。次に城の大警報の鐘の音が鳴り響いた。それは甲高い叫び声ではなく、目覚めさせられた古代の獣の深く呻くような音だった。それは何世代にもわたる戦いの重み、それぞれの振動が、過去の包囲と、その同じ石の上に流された血の記憶を帯びた音だった。下の広場からは、混沌が噴出した。叫び声、鋼鉄がぶつかり合う音、そして立ち上がる魔法の障壁の儚い輝き。しかしそれは、オプスキュリアの腐敗した存在によって打ち砕かれた。
バルコニーでは、空気が電気的な緊張で満ちていた。グレタは顔を青ざめさせていたが、まるで自分の子を守る雌ライオンのような怒りで目を燃やし、すでに命令を叫んでいた。怒りで甲高かった彼女の声は、今や指揮の道具となり、言葉一つ一つが鋭く正確で、戦いの騒音を切り裂いた。彼女はもはやハンマーを持った少女ではなかった。持ち場に立つ司令官、迫りくる闇に対する要塞だった。
アメシストは命令を待たなかった。下の混沌に軽蔑の視線を送り、首を鳴らすと、彼女は手すりから身を投げた。半透明のアメシストの斜面が城壁から噴出し、彼女はそれを滑り降りて戦いの中心へと向かった。まるで抑制された破壊の紫色の彗星のように、彼女のせっかちさの残響だけを残して。
そしてアーサーは……凍りついていた。俺の隣で、彼は恐怖の彫像と化していた。いつか軍を指揮するはずの王子が麻痺し、その目はローカスの銀色の姿に固定され、俺には想像もつかないような個人的な地獄を追体験していた。
俺はというと、役立たずだった。何ができるというのか? 以前の力の爆発で疲弊し、他に唯一の能力は、死なずに耐え難い痛みを感じることだけだ。その瞬間、俺はただの傍観者、終わりの始まりの無力な証人にすぎなかった。
その時、俺たちの後ろに威厳ある存在が感じられた。王だ。彼はもはや王族の衣装を身につけておらず、漆黒の戦鎧をまとっていた。エリート騎士たちが身につけていたのと同じものだが、彼のは過去の無数の戦いの傷跡で彩られていた。彼は下の混沌を見ようともせず、俺も見ようとしなかった。彼の疲れた重い目は、たった一人の人物に固定されていた。彼の息子だ。
彼はアーサーの後ろに立ち止まり、その影が震える王子を覆った。彼らの間の沈黙は、どんな戦いの叫びよりも大きかった。
「アーサー」
王の声は父親のそれではなかった。君主のそれだ。直接的で。冷たく。鋼鉄のような命令だった。
アーサーは身を縮めたが、振り向かなかった。「でき……ません」彼は震える声で囁いた。「父上……あの者とだけは」
「貴様の持ち場は城壁の上だ」王は息子の訴えを無視して続けた。「貴様の部下たちがこの城を守って死んでいく中、貴様は自分の失敗の影に隠れている」。言葉の一つ一つが、怒りではなく、義務の圧倒的な重さで放たれる打撃だった。
「分かっていない」アーサーは顔を涙と恐怖と恥で濡らしながら振り返った。「何が起こったか、ご存知でしょう。俺が……俺が何をしたか」
「貴様が何をしたか、知っている」王は石の仮面のように無表情な顔で答えた。「貴様は失敗した。そして貴様の失敗は、貴様を信頼していた民の命を代償にした。それが真実だ。それを消すことはできない」
王は一歩前に踏み出した。鋼鉄の手袋をはめた手がアーサーの肩に触れると、彼は身震いした。
「だが、過去は灰色だ、息子よ。今は炎だ。この瞬間に貴様が何をなすか……それが、その失敗が貴様唯一の遺産となるかどうかを決定する」。王の声は厳しかったが、その鋼鉄の表面の下には、抑えられた感情の流れ、壊れた息子を立ち上がらせようとする父親の苦悩が感じられた。「この王国は貴様の悔い改めを必要としない。貴様の痛みに割く時間はないのだ。この王国には貴様の剣が必要だ」
彼は近づき、声はより親密な響きになったが、その強さは変わらなかった。「貴様に勝てとは言わない。決して英雄になれなかった英雄になれとは言わない。私は貴様に命令を与える。たった一つの任務だ」
彼の疲れた目が一瞬、俺の方へ逸れた。
「あの少年を」彼は、少しだけ穏やかな声で、命令を装ったほとんど懇願のような声で言った。「ウロボロスのズアンは正しいかもしれない。彼が鍵になるかもしれない。貴様の任務はローカスを倒すことではない。貴様の任務は、彼が生き延びることを確実にすることだ。この義務を果たせ。王国の希望を守れ。それだけだ」
それは感動を呼ぶ演説ではなかった。それは生々しい懇願だった。壊れた王子への、王の最後の命令。彼に与えられたのは、
アーサーの姿勢の何かが変わった。涙が止まった。手の震えが収まった。彼の顔にあった
彼は俺に素早い視線を送った。俺には解読できない視線だった。それから振り返り、城の中へ、広場へと続く階段へ向かって走り出した。一言も言わなかった。ただ、石の床に響く彼の金属のブーツの音だけが、彼の決断を物語っていた。
王は息子が去るのを見届けた。そして一瞬、鉄の君主の仮面がひび割れた。彼の肩がわずかに落ち、静かなため息が彼の唇から漏れるのを見た。彼は突然、ただの疲れた老人のように見えた。
それから彼は俺の方を向き、その目には再び激しさが宿ったが、今回は違った。将軍の眼差しではなく、最後の、必死の願いをかける男の眼差しだった。
「少年よ」
俺は彼の注目という重圧の下で身を縮めた。
「私は彼に命令を与えた。今、貴様にも命令を与える」。彼は近づき、重い囁き声で、俺だけが聞けるように言った。「彼らが語るアーサーの失敗の物語……それは完全ではない。彼は弱かったから、あるいは臆病だったから失敗したわけではないのだ」
王はためらった。まるでその言葉を口にするのが難しいかのように。
「彼は彼自身の闇を抱えている。彼の中に『もう一人の王』がいる……」
「貴様に彼に同行しろと言うのは」王は、俺を貫くような目で続けた。「彼が貴様を守るためではない。貴様が彼を見張るためだ」
「もし戦いの最中に、貴様が彼が……ためらうのを見たら。もし彼の目の表情が変わったら、もし彼が虐殺の最中に微笑み始めたら……もし彼が『自分を見失ったら』……貴様の任務は彼を救うことだ。敵からではない。彼自身から救うのだ。彼を取り戻すためなら、何でもするがいい。彼を怒鳴ってもいい。彼を殴ってもいい。どうでもいい。ただ、あの……もう一人……に再び支配されるな」
彼は俺の肩に手を置いた。息子を掴んだのと同じ手だ。「分かったか、タイキ? 貴様は王国の希望だけではない。貴様は我が息子の
俺はそこに立ち尽くし、麻痺していた。その秘密と責任の重みが、山のように俺にのしかかってきた。俺は英雄でも、兵士でもなかった。俺は、別人格が大量破壊兵器である王子の子守だったのだ。
「……分かりました」俺は、か細い声で呟いた。
彼は振り返り、玉座の間へと戻っていった。俺をバルコニーに一人残し、下では戦いの咆哮が轟き、俺の心には新たな種類の恐怖が宿っていた。俺の任務は、限りなく複雑になり、限りなく危険になったのだ。
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