22 さみしい

 弓ちゃんが膝を抱えて座っている。

「さみしい」

「そうか、さみしいか」

 こんな時、弓ちゃんを抱きしめることができたらいいのになって思う。さみしいね。

 透明な腕で、弓ちゃんを抱きしめる。つもりになる。

「ぎゅー」

「ぎゅーって何」

「抱きしめる擬音」

「……ふふっ」

 弓ちゃんは、ちょっとだけ笑った。そして、自分の体を抱きしめるみたいに手を回す。

「ぎゅー」

「ぎゅー」

 さみしい夜。私たちは声だけで抱きしめあう。

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