16 にわか雨

 空が暗くなったなと思ったら、雨が降り出した。

「わー!」

 弓ちゃんが叫んでベランダに飛び出ていく。両手いっぱいに洗濯物を抱えて部屋に戻ってきて、大きく息をついた。

「はー、急に降り出すんだもんなぁ」

「夕立かな」

「かもね」

 ほとんど乾いてて良かった。なんて言いながら弓ちゃんが部屋の中に洗濯物を干し始める。手伝えたらいいんだけど、できないものはできないのでしょうがない。

「がんばれがんばれ」

「ふはっ……」

 弓ちゃんが笑う。何だよー。私には声しかないんだもん、仕方ないじゃないかー。

「別に申し訳なく思う必要ないのに」

「そうかもしれないけど、気になるの!」

「はいはい」

 部屋の中に洗濯物を干し終わるころ、空が明るくなってくる。夏の夕方の日差しが、部屋の中に降り注いできた。

「夏だなー」

「だね」

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