陰キャコミュ障ダンジョン配信者、顔バレして隣の席のギャルに好かれる

福サーモン

第1話 キツネのお面が割れた

 高校1年生の俺、水谷豪は現在Cランクダンジョンの扉の前にいる。


 「よし、妹から貰ったキツネのお面も被ったことだし、配信始めよう」


 俺はコミュ障陰キャで学校ではいつも1人。こんな状況を解消したいと思い、ダンジョン配信者になった。配信者になればコミュ障を解消できるのではないかと思いついたんだ。


 そして配信をするには『鳥形自動運転カメラカーキャくん』を買わないといけない。ダンジョン配信者は皆カーキャくんを買っている。値段は2万5千円くらい、高校1年生にはかなり痛い出費だったけど、後からそれ以上のものが返ってくると思えば痛くない。


 今日は記念すべき10回目の配信だ、最初は1人くらいしか配信に見に来てもらえなかったけど、最近は5人くらい配信を観てくれる人がいてとても嬉しい。

 コメント欄もまぁまぁ流れるのでコミュニケーションの練習にもなっている。


 「配信スタート」 


 俺がそう言うと、カメラカーキャくんはピロンと高い音を出しレンズが赤く光った。これが配信スタートの合図だ。

 

 視聴数は2人になっている、きっと数少ないリスナーさんだ。ありがたい。


 ・希子ちー『今日はダンジョンどこいくの?』


 お、毎回俺の配信を見に来てくれてる希子ちーさんからコメントが来た、コミュニケーション練習の時間だな。


 「今日はCランクダンジョンに行きます、よければ最後までご視聴ください」


 ・希子ちー「Cランクダンジョンかー、Bランクのゴーさんなら実力的にも大丈夫ですね! 頑張ってください!」


 「いつもありがとうございます、今日も死なないように頑張ります」


  俺は希子ちーさんに感謝して、Cランクダンジョンの扉を開けた。


 

 ダンジョンに入ると、早速魔物が現れた、ゴブリンだ。

 ゴブリンは魔物の中でも最弱と言われている。魔物にはEからSランクと強さのランクが付けられていて、ゴブリンは確かEランクだ。


 「グルルル……」

 

 俺は剣帯から剣を抜き、構える。

 

 「ギャーッ!」


 ゴブリンが右手に持っていた木の斧を鳴き声とともに俺に向かって投げてきた。

 俺は斧を軽々避けて速度上昇魔法を足に掛けてからゴブリンに接近する。

 剣をゴブリンの首元に狙いを定めて振るう。


 「グォーッ?!」


 見事にゴブリンの首を切り、倒した証として黒い霧になって消えた。


 ・希子ちー「流石ゴーさん! でも速度上昇魔法はあそこで使っても良かったんですか? ゴブリンくらいなら魔法なしでも普通に倒せますよね?」


 「小さい魔物相手にスピードをつけて正確に狙うのって意外と難しいんです、なので正確に当てる練習をしたかったんです」


 ・希子ちー「なるほど! 確かに小さいと当てるの難しそう」


 「そうなんです」


 俺はゴブリンが落としたアイテムがないか見てから先に進んだ、魔物を倒すと偶にアイテムが落ちることがあるから見落としのないようにしている。魔物のアイテムは高値で売れるものもあるから。

 

 ーーーーーーーーー


 ダンジョンの1番奥にはボスがいる、CランクダンジョンならCランクのボスがいる、BランクダンジョンならBランクのボスがいる、そしてその他の魔物はボスより1段階ランクが低い。

 俺は今Cランクダンジョンのボス部屋にいるはずだが、ここにいるはずのないAランクの魔物、デュラハンがいる……。

 

 「なんでCランクダンジョンにデュラハンがいる?!」

 

・希子ちー「え、ゴーさんじゃデュラハンに勝てないよ、早く逃げて!」

 

 希子ちーさんの言う通り、俺はデュラハンよりランクが下で弱い、早く逃げたい気持ちもあるが少し戦いたい気持ちもある。自分より強い魔物と戦ったことがないのでどの程度戦えるか試してみたい。

 危なくなったら逃げればいい……うん、そうしょう。


 まずは速度上昇魔法を全身に掛ける、そして剣に炎魔法を纏わせ炎の剣に進化させる。


 「これでデュラハンにどれだけ効くのか……」

 

 助走をつけてデュラハンに接近、まずは攻撃手段を1つ失わせる為に右手に持っている剣を離させよう。

 

 「炎斬り」

 

 剣がデュラハンの右腕に当たると、剣に罅が入り、折れた。


 「鎧硬っ?!」


 剣に纏っていた炎魔法も消え、完全に剣が使い物にならなくなった。これはやばい。

 

 ・希子ちー「ゴーさん逃げて! 死んじゃう!」


  デュラハンは剣で攻撃を返してきた、なんとか避けれたものの、攻撃は繰り返される。

 

 ・赤坂「デュラハンは炎魔法が苦手だから、貴方は有利です、勝てる可能性はあります、ですが危険なので逃げてください。あとギルドにも連絡しておきました、もう少しでAランクパーティーが来てくれると思いますので最後まで諦めないでください」

 

 生配信をしていると、視聴者さんがこうやって危険な時にギルドに連絡してくれる心優しい人がいる、生配信はやらないと損なんだ。

 

 そんなことを考えている内に目の前に剣が迫ってきていた。

 

 「あっ、やばいこれ」


 デュラハンの剣はキツネのお面に当たり、真っ二つに切った。

 割れたキツネのお面は地面に落ちた。

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