姉と妹
……と悩んでいたら、ルナがスタスタとマーズさんが小脇に抱えるイオに近づいていく。
ポカッ。
ルナがイオの頭を小突いた。
「あ痛っ! 何をするんですの、お姉様!」
「あんたがどんな夢を持とうが、どうでもいいのよ。そんなことより自分がしでかしたことの責任を取るのが最優先でしょ」
ルナもたいがい色んなことをしでかしている気がするけど、言ってることは間違ってない。でも落ち込んでる妹にそんな冷たい態度を取っていいの!?
「ですが……私はカロンに騙されて『アルファルド』を奪われ、ケレス様の求めるステラを手に入れるための手段も失われてしまいました。いったいどうすればこの罪を償えるというのですか?」
「なーに言ってんの。浮遊遺跡に行く方法はマーズさんが用意してくれるみたいだし、『アルファルド』は私が取り戻すから気にしなくていいわよ。あんたがやらなきゃいけないことは他にあるでしょ」
イオが語る彼女の〝罪〟なるものはルナが否定してしまった。ではルナがイオに求めているのは……?
「ふふん、早く町に行くよ。ここじゃ話が進みやしないからね」
マーズさんに促され、俺達はカリダの町へ向かった。イオは相変わらずマーズさんの小脇に抱えられている。
「おかえりなさい、大丈夫だったかい?」
ベスタさんが俺達を迎えてくれる。もはやジュノー博士の家が俺達の実家みたいな感覚になってきた。だいぶ人数が増えたけど。
「ルナさ〜ん、大丈夫でしたか〜?」
「私がそう簡単にやられるわけないでしょっ!」
そうか? わりとあっさり捕まってた気がするけど。ピョンピョン跳ねてフローラに元気アピールをしたルナは、マーズさんに目配せをした。
するとマーズさんは小脇に抱えていたイオをその場に立たせる。ああなるほど、そういうことか。
「え? え?」
状況が飲み込めずに、キョロキョロと周りを見回すイオの背中を、ルナが軽く手のひらで叩く。
「ほら、部下の不始末はあんたの不始末でしょ。この子はカロンの雇ったゴロツキにひどい目にあわされたのよ。言うべきことがあるわよね?」
ルナに促され、イオはやっと彼女の言わんとすることを理解したようだ。「あっ」と声を上げると姿勢を正してフローラに向き直った。
「この度は私の部下が大変なご迷惑をおかけしました。申し訳ございません」
イオが深々と頭を下げると、フローラが困ったようにピョンピョン跳ねた。
「ええ〜、私は大丈夫ですから〜。それよりルナさんの妹さんなんですよね〜、私ルナさんにすっごくお世話になってるんです〜」
やれやれ、これで一応は筋を通したことになるか。大貴族の箱入り娘で、悪い奴に騙されていたんだからもうチャラってことでいいよな。するとイオの隣にニクスが立って、今度はフローラの後ろで見守っていたジュノー博士とベスタさんに話しかけた。
「マケマケ公爵家で執事をしております、ニクスと申します。この度は我々の不手際によりこの町の方々にご迷惑をおかけしました。できる限りの埋め合わせはいたしますので、これでご容赦いただけますでしょうか」
執事服を着て背筋よく立つニクスが頭を下げると、それだけで絵になる。ジュノー博士達も恐縮してしまってなんだかお互いに気遣う空気が満ちたところで、マーズさんが手を叩いた。
「はいはい、もうこの話は終わりにしよう。これからの話をするよ、ほらみんな家に入った入った」
ちょうどいい具合に空気をリセットさせて、全員を家の中に移動させた。さすが大魔法使いだ、ほんの少しの行動でみんなの迷いを消し去ってしまう。
家に入り、ベスタさんが用意した椅子とマーズさんがどこからともなく出現させた椅子にそれぞれが座ると、またマーズさんが話を始めた。
「まずはみんな無事でなにより。カロンは『アルファルド』を奪って浮遊遺跡に行ったけど、焦る必要はないよ。あの遺跡に封印された『ザ・サン』は特別なステラでね、そう簡単に手に入れることはできない。それこそ『アルファルド』程度の力では太刀打ちできないぐらいに厄介な遺跡なのさ」
とんでもない話だ。あの『アルファルド』にだって俺とルナ、それにニクスが協力してもまったく歯が立たなかったのに、そんなステラの力でも太刀打ちできないような恐ろしい遺跡だなんて。
「じゃあどうすんのよ?」
またぴょんぴょんと跳ねながら尋ねるルナ。ちょっと落ち着こうか。彼女の疑問に、マーズさんはニヤリと笑う。
「決まってるさ、修行開始だよ」
「ええ〜っ!」
何故かフローラが驚きの声を上げるが、まあなんというか、ここから悠長に修行なんか始めて、本当にカロンにステラを持っていかれずに済むのかな? いくらなんでもカロンだって無策で遺跡の攻略をするわけじゃないでしょ。
「言いたいことはわかるよ。確かにこれからは時間との戦いと言っていい。でも心配しなさんな、ケレスとルナはこれから新たな力を身につける必要はない。まだ使いこなせていない強い力を持っているからね。自分でもわかっているだろ?」
使いこなせていない力……あの前世の妹アタックか。自分で考えておいてなんとも微妙なネーミングだ。それはそうと、ルナにも同じような隠された力があるのか? やっぱりルナも実は異世界転生したチートキャラだったのかな?
「仕方ないわねー、この超天才美少女魔法使いルナ様のスーパーパワーを解放するときがきたようね……ってなにそれ、私にまだ使いこなせてない力なんてあるの?」
ノリツッコミだと!?
結局ルナには隠された力があるのかい? ないのかい?
どっちなんだい!?
「あっはっは、ケレスはもうやるべきことが見えているみたいだけど、ルナはまず自分の本当の実力を知るところからだね。まあそんなに時間はかからないさ」
ルナの本当の実力か……気になるところだけど、俺は俺でどうやってあの力を使いこなすのか不安だ。妹の名前も思い出せないし、胸が苦しくなるやつもまた起こらないとは限らない。マーズさんを疑うわけじゃないけど、いったいどんな修行をするのだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます