第11話 抗えぬ螺旋(らせん)の終焉
分かっていたはずなのに、悲鳴が漏れる。後ずさり、尻餅をつく。全てが同じだ。この後、もう一度覗くと革袋を被った巨漢がいて、やがてドアがこじ開けられ、俺はなすすべもなく追い詰められる。
「…嫌だ」
拒絶の言葉が口をついて出た。同じように殺されてたまるか。
俺はスマホを探す代わりに、部屋の隅に立てかけてあった金属バットを握りしめた。これで殴れば、何か変わるかもしれない。
だが、次の瞬間、ガチャリ、と鍵が開く音がして、玄関のドアがゆっくりと開いた。
「なっ…!」
前回より早い!
革袋の巨漢が、刃渡り80センチの凶刃を手に、ぬっと部屋へ侵入してくる。俺が武器を手にしたことを察知したかのように、その動きには一切の躊躇いがなかった。
「どうやって、俺を認識している?」
前回と同じ疑問が頭をよぎる。だが考える暇はない。巨漢は無言のまま刃物を振りかぶった。俺は蛇に睨まれたカエルになるどころか、恐怖に突き動かされ、無我夢中でバットを振り抜いた。
キィンッ!
甲高い金属音が響き、腕に痺れるような衝撃が走る。刃物とバットが火花を散らして弾かれた。巨漢が僅かにたたらを踏む。いけるか!?
しかし、その一瞬の隙は、すぐに絶望で塗りつぶされた。巨漢は刃物を手放すと、空いた右手で俺の顔面を鷲掴みにしてきた。抵抗する間もなく体が持ち上げられ、前回と同じように、玄関とは反対の壁に叩きつけられた。
「グッ…ハァッ…!」
肺から空気が完全に絞り出される。視界が明滅し、バットが手から滑り落ちた。
ああ、結局、同じなのか。少し抗ったところで、結末は変わらない。
巨漢が落ちていた刃物を拾い上げ、俺の目の前で振り下ろす。
「これが死か。」
二度目の諦観が、俺の心を支配した。
その時だった。刃物が俺の喉元でピタリと止まり、開け放たれた玄関の向こうから、あの轟音が鳴り響いた。
「ゴゴゴゴゴゴッ!」
空間が歪み、俺の体ではなく、巨漢だけが玄関の外へ吸い寄せられていく。そして、黒いトップハットの紳士と、薔薇の頭を持つ掃除機「ローズクロス」が現れる。
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