今から見にいくⅡ〜封印された死者のビル〜

兒嶌柳大郎

第1話 戦慄、扉の向こうの悪夢

俺は警備の夜勤に向かう準備を始めていた。

パンを齧りながらDMで送られてきたビルの住所を確認。

ゲーミングPCをスリープしようとした時だった。

「コンコン。」アパートのドアを何か重たい杖のようなもので壁を叩く音が聞こえた。

聞こえた途端、背筋がゾッとした。

こんな夜遅く、チャイムではなくノックなのか。

嫌な予感しかなかった。

息をころし足音を立てず、そっと玄関の覗き穴に近づいた。

念仏を心で唱えながら深呼吸し覗き込む。

外から誰かが覗き込んでおり、大きな目玉が見えた。

予想外なものを見たため思わず声が出た。

「ヒイィッッ!」。

思わず後退りした。

「ええぇ?なんだ?」

外にいるのは人であることは間違いない。

宅急便?

最近の宅急便は玄関の前に置いていくそうだが。

「これは…、警察に電話するにしても、もう一度覗かなくては…。」

俺は嫌な予感しかない覗き穴に近づいた。

何が見えても驚かない。

息を整えながら自分に言い聞かせた。

2回息を吐いて、覗き込む。

すると玄関の前には人が立っていた。

目を凝らすと、上半身裸で革の袋を被ったプロレスラー並みの巨漢の男だった。

右手には刃渡り80センチほどのほぼ小刀の刃物を握りしめ、左手には何かを鷲掴みに持っている。

「これは警察に電話だな。」

俺は後退りし、スマホを探す。

スマホを手に握りしめて、再び玄関の方に振り返る。

すると玄関が開いていた。

「あっ」

思わず声が出た。

刃物を持った巨漢の男が部屋の中に入ってきていた。

俺は瞬時に殺されると直感し、抵抗する武器を探す。

なぜかハエ叩きを持って抵抗しようとしている。

「どうする。」

巨漢の男が被っている革の袋はこちらを覗く穴が無かった。

だが、明らかに俺めがけて右手の刃物を振り翳す。

そして、じわりじわりと巨漢の男が近づいて来る。

「どうやって、俺を認識している?」

俺は蛇に睨まれたカエルになっていた。

「動けない。」

その時、巨漢の男が刃物を振り下ろす。

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