異世界分割払い2回目生活

第6話 分割払いの本当の意味

 軽い下降感のあと、僕は何かにぶつかったような衝撃で目を覚ました。


 寝ている最中、ベッドから落ちたのだと思ったが違った。そこは砂利で舗装された道路の真ん中だった。


 目の前には見覚えのある男が立って僕を見下ろしている。あ。と思う間もなく、僕はその男が、この世界に転生したとき、分割払いの約束をした人物であるとすぐに直感した。


「どうだったですかユースケ様。一回目の分割払いの生活は」


 男の言っている意味が僕にはまったくわからない。


「…何を言っているんだ?」


 僕は立ち上がり、男に聞いた。


「僕の家はどこだよ。アンジェと暮らしている村の家は…」


 男は表情一つ変えず真顔のまま言った。


「いえ、ですから”あれ”は、一回目の分割払いです。今から、お約束通り、二回目の分割払いでの生活が始まるのですよ」

「はあ?どういうことだよ」

「おや。ユースケ様、まさかお忘れではないですよね。異世界転生について、24回の分割払いの契約書にサインなさったことを」

「そりゃ覚えてるさ」

「ですので、ここからが二回目の分割払いになります」

「は?なんだってんだよ。全然意味が分からないよ」


 男は少しだけ困惑した表情になった。


「ではもう少し丁寧に説明しましょうか。ユースケ様は24回の分割払いで異世界転生の契約をされた。ここまではよろしいですか」

「…うん」

「私どもはその契約に従って、ユースケ様に合計24回、分割して異世界生活をお届けしているんです。分割払いのたびに、ユースケ様はこの世界の、違う時間軸の場所に転生されます。ですがご安心ください。言語スキルと容姿、魔法スキルはそのまま引き継がれて、最初に申し上げました契約内容の通り、魔法スキルに対しては年に2割の計算で利息が付与されますから」

「ちょっと待ってくれよ」


 僕は急に恐ろしくなってきた。


「じゃあ、今いるここは、別の異世界なのか?」

「いいえ違います。いま申し上げた通り、ここも1回目の分割払いとまったく同じ世界です。ただ、時間軸…といいますか、時代と場所は別になっています。同じ世界ではありますが、過去・未来、様々な時代に場所を変えてランダムで転生していただくのです。残りは22回ですね」

「おい、ちょっと待ってくれよ!じゃあ僕が結婚したアンジェは?コボイの村はどうなったんだよ!」

「正確に申しますと、いま現在は、ユースケ様が1度目に転生された時代から、18年後の時間軸で、一回目の生活とは違う場所になります」

「あれから18年後だって!?嘘だろ!?」

「いいえ本当でございます。ユースケ様、分割払いを選択されて本当に良かったですね。異世界転生という常人ではほとんど経験できない生活を、24回も別角度で、お得に送れるのですから。分割を契約いただいた私どもも、ユースケ様に喜んでいただいて本当にうれしゅうございます。それでは、3回目の転生の時にまた…」


 男はそういうと消えた。僕は放心状態になった。妻になったアンジェは?アンジェのお腹の中に居て、もう少しで産まれてくるマーラは?ブルーは?村の人たちは?


「分割払いって、そういう意味だったのかよ…」


 間髪を入れず、道路の向こうから土埃と共に地鳴りがやってくるのが聞こえた。十数騎からなる騎馬隊の一群だった。


「どけどけーい、そこに突っ立ている下郎げろう!この国家の非常時に若者が昼間から何をやっておるか!ドーレン閣下隷下れいかの精鋭偵察部隊に道を開けんか!」


 悪夢だ―。と僕は思った。



(第7話に続く)

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