第22話 ドローン
▽第二十二話 ドローン
一ヶ月ほど不人気ダンジョンに潜った結果、ドローンを購入することができた。なんとお値段は35万円だ。
一日二時間どころか、六時間ほど潜ったのが効いた。
シュマロは長時間のお散歩に歓喜していた。
もはやノーマルサモエドではないので、散歩は睡眠時間と食事時間さえあれば、あとはずっとでもウェルカム、というのがシュマロのご意見らしい。
昨今はずっと飼い主との散歩漬けにより、ご機嫌で毛並みも艶々しているような気がしていた。伊達や酔狂で【毛繕い】で十分なはずが、わざわざブラッシングまで要求されている甲斐があるというものだ、とカイトは思うことにしている。
「はあ、俺は無限お散歩は無理だけどな」
「くうーん」
「一日八時間が限度だよ」
いくら体力が多かろうとも、ずっと散歩はしんどい。
偶には一日中、ずっと寝ている日があっても良いと思う。ゲームしたりアニメ観たり、本を読んだり、ちょっとはしゃいでプールとかカラオケも良い。
そういった遊びは犬とは共有できないが。
ドローンの設定を終えていく。
ダンジョンWi-Fiに繋いだ途端、勝手に配信される設定をオフにしておく。元々、配信が目的なので本当ならありがたい設定のはずだ。
しかしながら、カイト的には余計なお世話である。
「……設定完了、か」
小さなプロペラ付きの箱。
目立たないように黒く塗装されたそれを撫でる。つやつやとした新品の感触。つい嬉しくなってしまう。
フィルムをぺりぺりと剥がす。
この作業が所有感をくすぐる。
人によってはフィルムを剥がさない人もいるようだ。が、カイトは「これが気持ち良いのにな」と思ってしまう。
そして傷がつけば「あの時剥がさなければ」と絶望する。
「よし、名前は……【
『名称登録完了・当機の名称をヘルメスと認識いたします』
「最新って感じだ」
いきなり箱が喋り出したことにより、シュマロが目を見開いていた。近寄って匂いを嗅ぐ。
▽
「偵察を頼む」
『かしこまりました』
ドローン・ヘルメスが先を進んでいく。内蔵されているカメラの映像は、カイトが片手に持つタブレットへ共有されている。
かなり有用だ。
このダンジョンでも奇襲されることはある。岩や木の陰から攻め込まれたら危険だ。そういう危険を上空を行くドローンに偵察させる。
高解像度のカメラがダンジョン内の生物に赤い印をつけていく。
別画面を表示すれば、このフロアの簡易マップが表示されている。今、偵察させた魔物がいる付近には赤いピンが立っている。
「よし、いくぞシュマロ」
「うー!」
カイトが指刺した方向へと駆け出すシュマロ。まだリードは握りしめてあるが、魔物が見つかり次第、これを手放せば勝手に飛びかかっていく。
ヘルメスが偵察してくれたお陰で、魔物を見つける速度が段違いだ。
あっという間に
あとはシュマロが暴れてフィニッシュだった。ドローンを購入するための一ヶ月で、カイトたちもレベルをひとつだけ上昇させた。
たったひとつと言われるかもしれないが、10レベル以降はこのような感じだ。
どんどん要求経験値が増えていく。
ただ経験値を稼ぐというよりも、カイトは資金を増やすことに喜びを感じていた。シュマロについてもお散歩についての喜びが大きい。
のんびりと進んでいく。
そうやって一時間も狩り続けた後だ。
カイトはフリスビー状の椅子を展開し(フリスビー遊びが始まると熱狂したシュマロは、椅子になったのを視認した時、しょんぼりとした)、そこにゆっくりと腰掛けた。
警戒は索敵モードのヘルメスに任せる。
今のカイトたちが最も恐るべきは奇襲だ。その危険を摘めるヘルメスの存在は事実上、カイトパーティーの防御性能を一段も二段も引き上げた。
さらに敵位置を正確に確認することにより、毎度先手を奪えるので攻撃力も跳ね上がっている。
斥候の加入は目立ち辛いが爆アドだ。
シュマロも休憩を感じとって、足下で丸くなって昼寝を開始していた。
ただし、寝る前のオヤツ(犬用のジャーキー)だけはしっかり食べている。
「ドローン、買って良かったな。仲間がひとり増えた気分だよ」
水筒からコップに注いだお茶を飲んで、しみじみとカイトはそう呟いた。
これからも末永くお付き合いしていきたいところだ。なにせ35万円もしたのだから……
次回 ヘルメス死す
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