第16話 モンスターハウス
第十六回 モンスターハウス
ダンジョン攻略が進んでいく。
ほかの探索者に気を遣いながらの行進だ。わりと広いダンジョン内、まだ人が多い階層ではないようで誰とも遭遇しない。
「……」
ふと気になってタブレットで配信を確認している。
検索しているのは、このダンジョンの名前だ。多くのダンジョン配信者は挑戦するダンジョン名をタイトルやタグに貼り付けてあるのでヒットする。
わりと配信者は多い。
このダンジョンだけで20名ほどが配信を行っている。配信していない探索者もいることを加味すれば、50くらいは人がいると見てよろしい。
「低階層は需要もないか。あ、でもやってはいるんだ」
進んでいく。
このダンジョンは構造が変化しない。せっかくの迷路状だが解答は筒抜けである。もう少しだけ進めば広い空間にたどり着く。そこはいわゆるセーフルームと呼ばれている。
魔物が入ってこず、罠もない。
休憩スペースだ。
高難易度ダンジョンになればなるほどに、セーフルームは少なくなる。カイトも少しだけ疲れているので休憩スペースはありがたい。
「……えっと?」
ふと監視カメラに気づく。
ダンジョンに放棄したアイテムやゴミは、一定時間が経過することによって消失する。けれど、監視カメラやドローンなど「稼働」しているものは消えない。
ゆえにダンジョンには監視カメラが設置されていることが多かった。
カメラへ向けてピースなどしてみる。
どうして監視カメラに気がついたかと言われれば、付加されてあるライトが赤く明滅しているからだ。
ダンジョン天井付近。
そこに一定間隔で並べられている監視カメラ……
記憶を呼び起こす。
たしか講習で聞いた。赤い明滅は……危険に陥っている人物を通達するための信号だ。ハッとしてカメラを辿っていく。
より現場に近いほうが明滅が激しい。
より激しいほうに進んでいく。
リードを引いて全力で駆け出す。やがて辿り着いたのは……透明の壁に覆われたセーフルームだった場所。
モンスターハウスだ、と気づく。
モンスターハウス。
いわゆる部屋構造の場所に低確率で出現する、最悪の状況だ。いきなり魔物がわんさかと湧きだし、存在しなかったトラップが所狭しと設置される。
攻略すれば素晴らしい宝箱が手に入る。
けれど、危険だ。
またモンスターハウスにはいくつか種類がある。逃げられるタイプと逃げられないタイプだ。今回のは後者。条件は不明だが多くの場合、魔物の殲滅が要求されている。
透明の壁内部を覗き見る。
そこには三名の少女が大量の魔物に襲われていた。三名のうち二名が血だらけになって気絶している。
その光景を配信ドローンが上空から撮影していた。
グロテスクな現場を撮影することはしない。今頃はAIが「死があり得る現場」とモザイク設定配信に切り替えている頃だ。
「罠の所為でやられてる……」
モンスターハウスは難易度を超えた罠が設置されることがある。
一人は胸に矢が突き立っているし、もう一人はえげつない見た目のトラバサミが柔らかなそうな脹ら脛に噛みついている。
唯一、無事なのが槍を手にした少女。
カタカタと震えながらも、飛びかかってくるゴブリンや肉だるまのオーク、射出される木杭を捌いている。
それももうじき限界が近そうだ。
「いけるか、シュマロ」
「わおん!」
「そうか、わおんか」
カイトは視界内の床を【
シュマロはちょっとおつむはイマイチだが、これくらいならば理解してくれる。
ゴー、と叫べばシュマロが駆け出す。
あらかじめカイトが罠を解除した場所を駆け抜けていく。
白状すればカイトには「最短距離を突っ走った」のか「罠解除を理解した」のかの判断はつかない。
それでもシュマロは【使役強化・敏捷・極】によって目にも止まらぬ速度でモンスターハウスへ突入した。
そう。
じつは外部からモンスターハウスに挑戦することは可能なのだ。
入ったら条件をクリアするまで脱出不可能になるけれど。
シュマロが巨体オークを真っ向から切り裂く。
と同時、背後から迫ってきていたゴブリンに、振り向きざまに【ヴァーミリオン・クロー】をぶちまける。
一瞬で二体を仕留めた。
視界範囲内にはあと十三匹だ。
カイトはやたらめったらに床を【
シュマロが暴れる。
モンスターたちも健闘したが蹂躙される一方だった。飛ばす木杭も、圧倒的な反射神経と速度でたやすく回避される。
疾風がごとき勢い。
これが【
接敵と同時の蹂躙。十秒も経たぬうちにシュマロは敵を殲滅せしめた。
「うおおおおん!」
完勝を確信してシュマロが遠吠えを始めた。
助けられた少女は信じられないモノを目撃したかのように、その赤い瞳をぱちくりと開け閉めしていた……
次回 逃げ出す少年
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