第44話 P.7

 そこには、衝撃的な内容が書かれていた。


 大地は高橋真由にプロポーズしたが、振られたらしい。プロポーズした際、勢いでセクハラまがいのことをしてしまったので、彼女に合わせる顔が無い。だから、会社を辞める。社長職は俺に任せるとあった。


 俺は混乱した。大地の行動が全く理解できなかったからだ。


 そもそも、この結婚話はどこから出たのだろうか。大地と高橋は、付き合っていたのだろうか。大地の突然の退任には疑問しか浮かばない。


 俺はすぐに、高橋にことの次第を確認した。


 彼女は泣きそうな声で話し始めた。彼女曰く、大地とは交際などしていないという。大地は何度も高橋に思いを伝えたが、ことごとく玉砕した。


 それで、なぜプロポーズすることになったのか不思議だったが、彼女が言うには、大地は猛アタックを続け、それは次第にストーカーじみたものになっていったらしい。相手は勤務先の社長。無碍にすることもできず、かと言って、極めてプライベートなことなので俺や同僚の鈴木に相談する事も出来ず、高橋は、毎回やんわりと断っていたそうだ。


 そんな日々が続くうちに、大地の言動がエスカレートしていった。彼は、彼女に無理やりキスをしようとしてきたそうだ。これには、さすがに恐怖を感じたらしく、ついに高橋は拒絶の言葉を口にした。彼女は、「これ以上付き纏うなら警察に相談する」と、強めに言ってしまったのだと言う。


 そして、大地は会社を辞めてどこかへ行ってしまった。


 それを聞いた俺は愕然とした。大地のあまりの身勝手さに怒りすら覚えた。また、こんなことになるなら、もっと早く相談して欲しかったと高橋にも多少の憤りのようなものを感じた。


 だが、もう遅い。とにかく、今は、大地を探すしかない。


 まずは、もう一人のアルバイト、佐藤雄介にも事情を話した。彼はとんでもない事情を聞かされて驚いていたが、すぐに仕事の方は任せてくれと心強いことを言ってくれた。


 それからというもの、俺は必死になって大地を探した。だが、全く手掛かりはない。警察に捜索願も出したが、何の進展もなかった。


 結局、一週間ほど経っても大地は見つからず、俺は一旦、捜索を打ち切ることにした。これ以上仕事に影響が出ては困るし、俺自身も精神的に参ってきていた。


 二週間程経った頃、会社に行くと高橋が暗い顔をして待っていた。俺は、嫌な予感がしながらも彼女に尋ねた。


「どうしたの?」


 すると、高橋は目に涙を浮かべながら言った。

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