第42話 P.5

 こうして俺たちは二人三脚で新事業をスタートさせた。


 最初のうちは失敗ばかりだったが、次第に仕事にも慣れていき、少しずつ成果も出てきた。取引先も増えて事業は安定してきたが、まだまだ課題は多い。


 まずは、もっと多くの農家と取引ができるようにならないといけなかった。農家に訪問する機会をもっと増やしたいのだが、なにぶん人手が足らなかった。


 俺と大地は、社員になる人を雇うために奔走した。しかし、なかなか良い人材が見つからない。


 そんなある日、大地がある提案をした。それは、学生アルバイトを使ってみてはどうかということだった。


 俺は、正社員として長く働ける人手が必要だと思っていたので、最初は乗り気ではなかった。


 だが大地は、アルバイトの方が人手を集めやすいし、自分たちの会社にマッチした人材を探すよりも、学生のうちから、いずれは社員にするというつもりで一から育てた方が、長期的にみても会社の戦力になり得ると言った。


 確かにその意見には一理あると思ったので、とりあえずアルバイトで人手を補うことになった。そこで単価の安いタウン紙に求人を出し、アルバイト希望者を募った。すると、すぐに反応があった。応募者は三名だった。


 一人目は、佐藤雄介。二十歳。大学生。農業に興味があるものの、具体的に将来どのようなことをしたいのかは決まっておらず、農業業界のこともよく知らないという。


 二人目は、鈴木健太。十九歳。大学生。彼は農業に対する興味がとても強く、実家が農業をしているのでいずれは継ぐ意志があるようだ。


 そして、三人目は、高橋真由。十八歳。応募者唯一の女性だ。彼女は、高校卒業後に就職したものの半年ほどで仕事を辞めてしまったらしく、今はフリーターをしながら就職活動中だという。


 早速面接の日程を決める。


 面接当日。会社説明をした後、俺は応募者に尋ねた。


「今回アルバイトとして募集をしていますが、弊社としましては、長く働いてもらうことを前提とさせていただいています。そのため、もし働くならいずれ正社員として働きたいという方を希望します。その点については問題ありませんか? 」


 三人が答えた。まず、最初に口を開いたのは、佐藤雄介だ。


「私はまだ、将来について具体的な方向性が決まっていません。そのため、今ここで御社の正社員を目指したいとは言い切れません。でも、農業関係のことはまるで知らないので、将来の選択肢を広げるためにも御社で働いてみたいです」

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