十五刀目 友達

入学式が終わり、教室に戻る。教室に戻ると、先生は椅子にドサッと座り込む。


「疲れたー」


生徒の前で見せていい姿なのか?それは。そんなことを思っていると、先生が言った。


「次の動きまで自由時間です。好きなように喋ってくださいね」


すると、隣の席の子が俺に話しかけてきた。


「ね、俺、栗花落音也つゆりおとや!君は?」


うわあ、フレンドリー!

待って待って、いや、反応に困る。そんな急に話しかけられてもテンパるだけなんだけども。

だってさ、あれよ?俺、小学生の時何もしゃべんないでいじめられてばっかの陰キャよ?無理だよ急に喋れって言われても。

音也は少しきらきらとした目でこちらを見つめてくる。

まぶしい!なんていう陽キャ感。


「ね、ね、ね、ね、いいでしょ?いいでしょ?教えてよ」


音也の口調、根性に負けて小さな声で言う。


「大山大和……です」


「へー、音也、か!よろしく、音也!」


「よ、よろしく……お願い、します」


要さんとか勝人さんとかはこんな押してくるタイプじゃなかったから一応平気だったけど、音也は押しが強すぎる。

正直こういうタイプの子苦手なんだよなあ。怖いもん。

すると、音也が言った。


「ね、大和の魔法何?」


「え」


いや、でも要さんとかカナさんとかにいろいろ言われたからなあ。自分の魔法は見せるなって。

どうしよ。え、なんて答えたらいいんだろう。


「えっと……その……親に、言っちゃダメって口止めされてるから」


「……そっか。じゃ、俺の魔法も内緒」


「う、うん」


音也は少し残念そうな顔をしたけど、すぐに笑顔に戻った。


「じゃあさ!得意な魔法の種類は?」


「……俺、あまり、魔法得意じゃなくて」


詠唱すれば噛むし無詠唱だと調整が難しいし、基本的に小さいことしかできないし、あまり長くは続かない。音也は驚いたような顔で言う。


「魔法苦手なのによく魔法学校入れたね!」


確かにそれはそう。耳が痛い言葉ではあるけど。

まあ、でもね、ちゃんと刀のほうはしっかりできてるし、無詠唱ができる人って本当に凄いらしいし。希少性も高いって言ってたし。多分凄い方の生徒なんだろうとは思う。


というか、音也の顔、どっかで見たことあるんだよな……。

まあでも、あってもおかしくはない。第一の地球にいる人と第三の地球にいる人ってそっくりらしいし、道ですれ違ったとかだったらあり得る話だ。

音也は少し困った表情を浮かべる。


「大和、魔法が苦手なのはマズイよ」


「……なんで?」


「だって、これから個人魔法のテストあるもん」



「……え?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る