九刀目 ザクロ

ドラクエ歩きで向かった先。……???看板の字が読めない。だって、パソコンのキーボードで出てくる記号が並べられているだけだからだ。『^@「!ー?』……いや、読めるか!


「あの……文字、読めないんですけど……」


勝人さんは少し首を傾げる。


「ん?読めない?あ、そっか。別の地球から来たんだもんね。使われてる文字自体は見たことあるよね。文字の作り方も似てるし。冬くんが教えてあげたら?」


冬和は少し迷ってから頷く。


「わかりました。……大和、この看板に書いてある文字はザクロ、と読む。女店主が経営する武器屋、ザクロ」


ザクロ!?美味しそうな名前!


「間違っても美味しそうな名前とか思うなよ。その名前、今の店主の母親がつけたんだ。今の店主、この名前嫌ってるから美味しそうな名前とか言うと殺されるぞ」


……口に出さなくてよかった。へー、これでザクロ、か。じゃあ、^@が「ザ」で「!が「ク」で、ー?が「ロ」、か。……なんで?

そんなことを1人で考えていると、俺以外の4人は横を通って店の中に入って行った。わ、急がなきゃ!

中に入ると、広い店内に、綺麗な、澄んだ女の人の声が響いた。


「おいでなんし」


こちらを見ると、にっこりと笑って近づいて気がした。


「いらっしゃい、久しぶりだね、勝人、要、叶人、冬。それに、もう1人……お供に男子かい?肉付きは悪う無いね。どうでありんすか?一つ、ここで働いてみたり……」


勝人さんはニコニコ笑いながら言った。


「お六ちゃん、大和くんは叶人くんが拾って来たんだ。ほら、この店の客だよ」


「そうかい。残念だね。ま、また気が向いた時にはすぐに言っておくんなんしえ」


……叶人さんについで標準語以外のよくわかんない言葉を使う人だ。


「で、武器買いに来たのでありんしょう?さ、案内するから着いて来ておくんなんしな」


……なんか、俺にだけ敬語なんだな。案内されたところは、薄暗い蔵のようなところで、壁にずらっと武器が並んでいる。

こんなにたくさん武器があるというのに、それを無視して俺の足は奥に引き込まれて行った。

俺は、ある刀の前で立ち止まる。その刀は、俺の目には光って見えた。


「なるほど。おまいさんがえらんだのはそれでありんすか。それは扱うのが難しゅうて誰も手に取らのうござりんしたけどね。相当強い魔法をお持ちのようで。あんた、どんな魔法を持っているんでありんす?」


「俺の魔法は……」


言いかけたとき、カナさんが制す。


「あ、ちょっと待って。お六やけんよかばってん、一般人にはじぇったい言うてはいけん。魔法が強すぎて避けらるー可能性があるけんね。魔法ば聞かれたっちゃ答えんとよ」


「あ、はい。えっと、俺の魔法は、和、です」


お六さんの目がまんまるく開く。


「それはほんざんすか!?」


「ほ、ほんざん……?」


「本当か、と言う意味だ」


要さんが助け舟を出してくれる。


「は、はい……」


「叶人、おまえ……どんな子拾って来てるんのかい?冬もこいつと同じくらい強い魔法持ってるざんしょ。なんでそんなに引きが良いわけ?なんか人生不正でもしてやす?」


「人生は不正しようばってん無かろ」


勝人さんは刀の値段分のお金をレジ?の机の上に置いて、刀を俺に手渡ししてくれる。お六さんは俺の背中を軽く叩く。


「まあ……そんな魔法だと、大変なこともあるだろうけど、頑張っておくんなんし。応援していおきんすえ。なんか辛いこととかあればここに来なんしな。すぐに対応してあげんすから。それと、刀は大切に扱いなんし。この刀は、大切に扱うと、いつか面白いことが起こりんすから。何が起こるかは起こってからのお楽しみでありんす」


「ありがとうございます!」


俺らは、お六さんの店、ザクロから出る。刀は、一ヶ月に一度点検をするらしい。


……さ、家に帰って勉強だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る