七刀目 代償と魔法
円の中に入った瞬間、頭の中に映像が流れ込んでくる。
「……あれ?」
胸がぐらぐらして来て不快感が充満する。
「な、何……これ……」
過去の記憶。見たくもなかった、嫌な記憶。
冬和がいなくなっちゃって。
母さんたちがそれにイライラして俺に八つ当たりするようなって。
父さんが亡くなって。
母さんのイライラが大きくなっちゃって。
学校では片親っていじめられて。
新しい義父さんが来て、連れ子の奏多が俺のことを奴隷みたいに扱って。
どんどん嫌な記憶が頭の中に流れ込んでくる。全て見終わってから、目の前が真っ白になり、視界が元に戻る。俺は、地面に崩れ落ちた。足や手が震える。
「……はっ、はっ……っは、はっ」
浅い息を繰り返す。俺が異常であることに気がついたカナさんと要さん、勝人さんが駆け寄ってくる。
「だ、大丈夫!?」
「どうした!?」
「何があった!?」
俺は目をぎゅっと瞑って頭を横に振る。
「ちが……だ、だい、じょ……大丈夫、です……」
冷や汗と涙が止まらない。俺は無理やり笑顔を作る。
「代償って、こんなに嫌な物なんですね」
三人が困った表情をして、とりあえず俺を円から出して、近くの木陰で休ませてくれた。
「ほら、水飲め」
「ありがとう、ございます……」
しばらくして、要さんは少し困った顔をして聞く。
「魔法、出せるか?気力的にも、体力的にも……」
「多分……できます」
「やってみろ」
俺は手を開いて前に差し出す。魔法さん、お願いです。えっと……出て来てください。
念じると、手の前にあったかくて明るい、黄色っぽい球体が浮かび上がってきた。それを見た瞬間、全員の顔色がサッと変わる。
「嘘……だろ?」
「やべーな、これ」
「どうしよう……」
「まずいですよ、これは」
4人が声を揃えて言う。
「その魔法は……」
「「「「強すぎる」」」」
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