出来損ない聖女には顔しか取り柄がないので、旦那と勝手に生きていきます!
砂利じゃり
第1話
「リミス、10才のお誕生日おめでとう!」
ぱぁんとクラッカーが鳴り、部屋中に明るい声が響く。リミス、と呼ばれた少女は、戸惑いながらも嬉しそうに微笑んだ。
純白のドレスは、まだ少し彼女には大きい。しかし、彼女の気品に圧倒され、着られているという印象は全くない。金色に近い栗毛を編み込み、後ろで束ねた髪に、緑の宝石があしらわれた髪飾りが光っている。首元にはこれまた緑色の石を中心にはめ込んだ首飾りが、少し大人っぽい雰囲気を醸し出す。何より、将来はこの装飾品にも負けない美人なるだろうという、優しくも美しい顔立ち。
燐光のように美しいリミスの姿を改めて見たお母様は泣き、お父様はめったに見せない笑みを浮かべ、リミスの肩を叩いて喜んでいた。
リミス、私の二つ下の妹。10才の誕生日を迎えた彼女は、非常に盛大に誕生日を祝われていた。
いや、誕生日だけを祝われているわけではない。私はさっきから何も言えずに、ニコニコと微笑みを顔に貼り付け、リミスの手を見ていた。彼女の手の甲に、淡く光る絵が描かれている。その絵は涙型に羽のようなモチーフをあしらわれ、お伽話の「御遣い」を思わせた。
「リミス、聖跡の発現おめでとう。お母様、本当に嬉しいわ」
「ああ、今日からおまえが我がリュグナー家の跡取りとなるのだ。明日からは忙しくなる。新たな当主見習いとなるお前を皆に見せて回らねばならぬからな。祝賀の催しも改めて行わなければならないな。」
「でも、今日だけは家族水入らずで過ごしましょう。遠くに行ってしまう娘と、少しでも長く一緒に居たいのだもの。」
私は溜息をつきたいのを堪え、目の端にじわじわと溜まる涙をこっそり拭った。
「マルガリータが発現しなかった時はどうなることかと思ったが、今となってはこれで良かったと思えるな。なにせ我らが愛のリミスが、世界を救う聖女となるのだ」
「ええ、あなた。わたくしも、きっとリミスが成し遂げてくれるって信じております。リミス、これから貴方は急いでお勉強をして、それが終わったら旅に出るの。
困難な旅路かもしれないけれど、わたくしたちは貴方の無事を毎日欠かさず祈り続けるわ。そして、責務を成し遂げたら、きっと、帰ってくるのよ」
私は目眩がした。仲のよい隣のクラスに間違えて入ってしまったような異物感。こんな美しい家族の中に私はいるのに、まるでいないような気がしてくる。
数年前まで、その席には私がいた。母も父も私に期待し、私の力を信じ続けた。
「リュグナー家の長子が10になった時、右手に聖跡が現れる。その者は魔を祓い、世界に光をもたらす勇者を助けるであろう。」
リュグナー家の長女たる私、マルガリータは二年も前に10才の誕生日を迎えている。だというのに、この右手は相変わらず普通のの手のままだ。
私は、妹の右手から目が離せない。淡く、光の粒子が煌めいていて、まるで大聖堂の壁のように白亜の輝きを以て、その者の心根を表しているようでー。
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