地獄は空：第一部・不義

第19章：混乱

ラウルとアーネストは現場から急いで逃げていた。

「どこに隠れればいい？」とラウルが尋ねた。

「セバスチャンの家だ…」とアーネストが答えた。「サユリと私の叔母を守らなければならない…」

「母さん！」…とサユリの叫び声が聞こえた。

「それは…？」とラウルが尋ねた。

「サユリだ！」…とアーネストが叫んだ。「急げ、ラウル！」彼らは家のドアに到着し、入る準備をした。

「銃を出せ…」とアーネストが命じ、銃を取り出した。

ラウルは従い、ドアを蹴破って中に入った。ユリが死んで血を流しているのを見て、サユリが泣き叫んでいた。

「叔母さん…」とアーネストは思った。「サユリ、大丈夫か？」と近づいた。

「アーネスト、私は何もしていない…」とサユリは動揺して言った。「全部私のせいだけど、私は彼女を殺していない…」

「サユリ、落ち着いて…」とアーネストは彼女を抱きしめながら言った。「心配しないで、私たちがいる…」サユリはアーネストの胸で泣き崩れ、彼は彼女をなだめた。

「大丈夫だ…ラウル、カモミールティーを作ってくれ…」と命じた。

「はい…」とラウルは台所に向かった。数分後、ティーが出来上がり、ラウルはサユリにそれを注いだ。彼女が飲むと、手が震えていた…。

「神様、手が震えている…」とラウルが言った。

「ラウル、二人きりで話そう…」とアーネストが言った。彼らは台所に行き、話を始めた。

「サユリに聞かれたくないことは何だ？」とラウルが尋ねた。

「これは初めてのことじゃない…」とアーネストが答えた。

「理解できない…」

「ウリエルが死んだとき、彼女は私たちが見つけたときと同じ状態になった…」

「それはいつのこと？」

「6年前だ…サユリは夜、父を呼んで叫んでいた。神経衰弱が再発して、セバスチャンのことを話すと、もっと悪化するだろう…」彼らはサユリの元に戻った。

「小さなサユリ、落ち着いているかい？」とラウルが優しく尋ねた。

「はい、ラウルさん…」と彼女が答えた。

「何があったか教えてくれ…」とアーネストが言った。

「青山将軍がここにいた…」とサユリが言った。ラウルとアーネストは驚いた…。

「彼は私の母を泣かせた…」

「彼女を殴ったのか？」とラウルが尋ねた。

「いいえ…」と彼女は答えた。「母は私がファウスティス・フォン・ヴァナハイムの娘だと言った。そして、彼は私に会うためにトゥーサン家全員を殺すと言ったけど、母を殺さなかった。もしファウスティスが誰も殺さなければ、青山将軍が私を撃つと言った…」とサユリはあくびをした。

「眠いのか？」とアーネストが尋ねた。

「はい…」と彼女が答えた。アーネストは彼女を自分の部屋まで運び、ベッドに寝かせた。サユリが尋ねた。

「兄たちは？」

「ミカエラはアメリカ合衆国大使館でマイケルズキャプテンと一緒にいる…」と彼は答えた。「セバスチャンはフランス大使館で叔父たちと一緒だ…」

「戻ってくるの？」と彼女が尋ねた。

アーネストは微笑んだ。「はい…休んで…」と部屋を出た。「サユリにセバスチャンのことを嘘をついたなんて信じられない…彼女がもっと苦しむのを見たくなかった…彼女を泣かせるのが耐えられない…」と彼は思った。「アーネスト、これは深刻だ…」とラウルが言った。「ユリの遺体について何かしなければならない…」

「できることをしてくれ…」とアーネストが言った。「私はトゥーサン家に連絡する…」と彼はミシェルに電話をかけた。

「トゥーサン司令官です…」と電話が応じた。

「司令官、私はアーネスト・デラベルです…」

「大丈夫ですか？」

「はい、私たちはセバスチャンの家にいますが、到着したときに叔母が死んでいて、サユリが動揺して泣いていました…」

「青山はあなたの叔母を殺したのですか？」と司令官は言葉を失った。

「はい、彼女はもう落ち着いて寝ています…」

「アーネスト、事態は非常に悪化するだろう。だから、私たちと一緒に来て、サユリとラウルを連れて行って、ユリに聖なる埋葬を施すことをお勧めします…」

「ありがとう、司令官。数日内に行きます…」

「いいでしょう…」

「ラウルが葬儀を担当します…」

「アーネスト、サユリは一人になってしまった…そして、今はセバスチャンの役割である彼女を守る責任があなたにある…」

「はい、分かりました…」と彼は電話を切った。翌朝…

ラウルは朝食を作っていて、アーネストが到着した。

ラウルは微笑んだ。「おはよう、アーネスト…」

「何が良いの？」と彼は苛立ちながら座った。

サユリがその場面に驚いてやってきた。

「おはようございます？」と彼女が尋ねた。

ラウルは微笑んだ。「おはよう、小さなサユリ…」

「気分はどう？」とアーネストが尋ねた。

「少し良くなった…」と彼女が答えた。

アーネストは立ち上がった。「ラジオをつけるよ…」「昨夜22時頃、青山将軍に対するクーデターがありました…攻撃者はすでに特定されています：レイキ・マイケルズ、クーデターのリーダーでアメリカ合衆国大使館のキャプテン；ジナン・ストリート、マイケルズの助手でその組織の中尉；ミシェル・トゥーサン、フランス大使館の司令官；ミカエラ・トゥーサン、彼の姪でその組織の助手と中尉…そして今、一般市民：ラウル・クレメンツ、東京大学の学生会長；アーネスト・デラベル；アーサー・オテロ；秋吉京子；アンドレアス・白山；セイ・ストリート；ジョセフ・ホワイト；榊・ヒロシ；セバスチャン・トゥーサン、彼はクーデターで亡くなりました…」

「何？」…とサユリはそのニュースに驚いた。「兄は、死んだの？…アーネスト、知ってたの？」

「はい…」と彼は答えた。

サユリは泣き崩れた。「あなたは私に嘘をついた…」

「サユリ、泣かないで…」と彼は彼女をなだめようとした。「あなたのためだったんだ…」

「シーッ…」とラウルが彼らを静めた。「そして、他にも関与している人がいます：ラファエル・トゥーサン医師とガブリエル・トゥーサン弁護士…彼らはすべて青山将軍を殺しました。これは、彼ら全員が私たちに対抗している証拠です：スペイン、フランス、ドイツ、アメリカ合衆国が私たちに対抗して陰謀を巡らせています…現時点で井上家は逮捕命令を出していません…引き続きお知らせします…」3人は言葉を失い、ラウルが沈黙を破った。

「静かに朝食をとろう…」

食事の後、ラウルは発表をした。

「葬儀の手続きを進める…アーネスト、サユリとここに残ってくれ…」

街では、ラウルが「神」に逆らったことで皆が彼を見つめていた…。手続きを終えた後、彼は家に帰った。

「ラウル…」とアーネストが彼を迎えた。

「ラウルさん…」とサユリが挨拶した。

「何を言われた？」とアーネストが尋ねた。

「棺がもうすぐ来る…」と彼は答えた。「葬儀は午後だ…」午後になり、葬儀は仏教式で行われ、出席者はラウル、アーネスト、サユリの3人だけだった…。寺を通り過ぎる人々はユリの死についての噂を話しており、ファウスティスは遠くから悲しみの中でその儀式を見守っていた。

「ユリ…」と彼は泣きながら言った。葬儀が終わると、青山将軍がファウスティスをフォン・ヴァナハイムの家の前で待っていた。

「こんにちは、兄弟…」と日本の軍人が挨拶した。

ファウスティスは悲しんでいて、挨拶には応じなかった。「君は喜ぶべきだ…」と彼は言った。「君は娘を手に入れることになる…」

「ユリがいないと、同じではない…」と彼は返した。「兄弟、かつて人類を嫌って感情を持たなかったルシファーはどうなった？」と青山が尋ねた。

「もう存在しないと思う…」と彼は背を向けた。

「私は君に恩を施した…」と青山が言った。「感謝すべきだ…」

「何？」と彼は混乱して振り返った。

「私は君の愛するユリを殺した…」と彼は告白した。