世界の片隅で二人歩む一本道
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第1話 出会いそして分岐
クリアしたゲームの世界で暮らすって夢のない事なんだなって。
俺は自分がクリアしたゲームの世界に飛ばされてしまい仕方なくこの世界で暮らしている。
ただ俺一人で暮らしているのではなく、このゲーム世界の人物であるアシッドという女性と共に暮らしている。
そもそもこの世界に来る前は現実世界で何をしていたのかというと。
ゲームで大型イベントが開催されており俺はそのイベントに参加していた。
そのイベントは高難易度ステージをクリアするといったもので初めは上位ランカーたちによって攻略が始まった。
俺もその攻略組としてプレイしていた。
結果から言うと俺は最速でステージクリアをした。
そして俺は誰よりも早く大型イベントの続きのストーリーを読みその後に控えているステージに挑もうとした際、
「あなたは私のさいごの希望なのです。」
「さいごの希望のあなたに託したい事があります。」
その後はこのイベントが起こった原因やそれを解決する方法などがアシッドから伝えられた。
彼女はもう一人の自分のリズを救い出したい。
彼女の願いはこれだった。
そして彼女はこのようなイベントを起こした、それがきっかけで世界が滅びそうになったが。
俺は彼女の願いを聞きそれを叶えるため、このイベントをクリアするため俺は努力した。
そしていくつもの難関を突破しイベントはクリアされアシッドはリズを解放しリズは自由の身となり今まで見てこれなかったものを見るためにリズは旅にでた。
それで大型イベントは終わりを迎えた。
俺は数日間このイベントをずっとしていたため疲れを取るために体を伸ばすために立ち上がり目を休めるために目を瞑りそして目を開けるとそこは先ほどまでいたはずの見慣れた部屋の中ではなく先ほどなでプレイしていたゲーム世界の草原に立っていた。
俺は自分の目を疑った。
先ほどまで部屋にいたのにいきなり外にいるなんてどう考えてもありえない、おまけに先ほどまでゲームしていた世界に飛ばされているなんて普通に考えてありえない、
「…こんな幻覚見るなんて俺疲れてんだな」
「そんなことはないのですよ」
背後から聞こえてきた声に反応し振り返るとそこにはアシッドがいた。
「…ぶっ通しでゲームしてたのが原因だよなぁ」
「ちゃんと現実を見なさい」
そういうと彼女は俺の近くに近づいてきた。
「まずあなた様は疲れているとかではなくわたくしがこの世界にあなた様を召喚いたしました。」
「俺召喚されたの!?」
「えぇ、わたくしがあなた様を召喚いたしましたわ。この世界を救ってくださったさいごの希望様を」
「だとしてもなんで? リズは解放したし他に何かあったけ」
アシッドに尋ねると彼女は目をそらした。
「…もう一度聞くけど世界を救って、リズを解放したこと以外にやらなきゃいけないことがなんかあるの」
「…アリマセンワ」
「いまなんて?」
「他にやらなくてはならないことなんてないのですわ!!」
俺の鼓膜を破壊するんじゃないかと思うぐらいの声量で叫んだ言葉の内容は俺を混乱させた。
「…え、何もないの。何もないのに俺召喚されたの」
「そうですわ。何か文句でも」
彼女はいつでも逆ギレしてやるという気配を出していた。
なんでなんでと俺は悩んでいると一つの可能性が浮かんだ。
「…もしかしてひとりぼっちが嫌だから呼んだんか?」
「…ソンナコトデハナイノデハナイノデショウカ」
「確かアシッドってひとりぼっちが嫌いなんだよな」
アシッド、彼女はもう一人の自分であるリズの事が好きでありその想いからリズを解放しようとした結果世界の存亡に関わる大事件を起こした、それが今回イベントの起こった原因の概要なのだがイベントがクリアされリズが解放され旅に出たのだが、そのイベント中で彼女の嫌いなものとして挙げられていたのが"ひとりぼっち"であった。
俺はもしかしてと思い。
「もしかしてリズが旅にでてひとりぼっちになって嫌だったから俺を呼んだのか」
彼女は親からバレたらまずいものを隠す子供のようにそっぽを向き徐々に俺とは逆に動いてるのがバレないようにゆっくり進んでいった。
「…なにゆっくり離れていってるんだよ」
「………デスワ」
「ん?」
「あなたと初めて会話をしてわたくしが起こした問題を誰よりも真剣に解決してくださりわたくしのことを口説いたからではありませんか!」
「口説いた記憶はないんだけれど」
「問答無用です!」
彼女はこちらを向き顔を合わせ思っていたことを伝えてきた。
「…まあ理由はわかったからとりあえず現実世界に帰してくれないかな」
正直俺はゲームの世界に転生したいと思ったことがない、それに俺には暮らす環境を変える度胸なんてものは持ち合わせてはない、そんなものを持っていれば今頃もっとまともな生活をしている。
「…わかりましたわ、無理矢理召喚したわたくしにも非はありますし、送り返せなくなる前に帰してしまいますか」
「え、ぐだぐだしてたら帰れなくなってたかもしれないのかよ」
「マァソンナコトモアリマスワ」
彼女はそういうと俺を送り返すための準備を始めた。
(なんでゲームしてただけでこんなことになったんだろうな)
俺はそう思いながら彼女が描いた魔法陣の真ん中に立っていた。
俺がこんなことを考えている間にも俺を現実世界に返す準備着々と進んでいる。
「もう少しで送り返せますわ」
「おかのした」
そして待つこと一、二分
「あなた様、現実世界に転移させる準備が終わりましたわ」
そういうと彼女は詠唱を始めた。
(なんかアシッドを見てると昔のことを思い出すんだよな)
昔あった出来事その出来事を今でもずっと引きずっている。
(俺はこのまま何も変わらないまま生きていくのかな)
昔の出来事を一生引っ張り続けそこで失ったものをずっと失ったままで。
俺はふとアシッドの方を見た。
彼女は泣いていた。
俺は彼女の泣き姿に昔のあの子の姿と重ねた。
あの時、あの場所で、行動していれば俺の人生は変わっていたのだろうか。
もし過去に囚われているなら一歩踏み出せばいい、言葉ではとても単純だけれども実際に行動に移すとなると話は変わる。
だけれども今俺は変わらなければきっとこれからも変わることはないだろう。
だから、
「ちょっと待って! やっぱ帰るのやめるから詠唱止めて」
そういいながら俺は魔法陣の外に飛び出した。
「ちょ、いきなりどうしたのかしら!?」
「いや、やっぱりこっちの世界にいたいなって」
「先ほどまでといってることが逆だと思うんだけれども」
「まぁ、あっちの世界に戻ってもやっていることは今までと変わらないし、俺なんて居なくても誰もなんとも思わないだろうしな」
彼女はそうはいうが心の中ではきっと喜んでくれてるのではないか。
俺は自分のこの判断を、この選択をきっといつか後悔する時が来るのかもしれないがその分この世界に残ってよかったと思える出来事があるかもしれない。
そんな希望を胸に俺は彼女に涙を流させないために、過去から決別する為に新たな地で俺は新たな人生を送ることを決めた。
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