第3話 但し、武力に限る

 それからおれはカシワバラ直下の兵隊になった。




 仕事は多岐に渡る。カシワバラに訊ねた時には単純にはぐらかされたと思ったが、オヤジの組織には確かに一言で説明するには難しい商売の広さがあった。




 表の部分では、例えば『強化ブーステッド』が毎夜の享楽を明かすための店の経営。そこから派生するのは出回る嗜好品の流通。それを支える輸出入。




 店舗の経営だけでもそれだ。そのうえ、そうした表の部分でさえ、一歩踏み込めば全て裏の顔を見せる。




 輸出入する品にはトーキョーでなければ、他の『クニ』の法律の元では、絶対に許されることのない品が含まれ、許されることのない売買の方法が採用される。酒、クスリ、『非強化アンブーステッド』の奴隷。賄賂、恫喝、美人局。果ては社会的抹殺を含む暗殺まで。なんでもござれ、あの手この手で組織は広がっていく。




 そんな組織のなかでおれの仕事はシンプルなもの。紛れもなく強襲型『強化』の仕事だった。




 似たような犯罪組織が乱立するトーキョーでは、組織同士の揉め事は日常的であり、強襲型『強化』はどこの組織でもいわばその『調停役』あるいは『交渉役』だ。但し、武力に限るが。




 先日のような『取り立て』もあったり、おれが初めて『亡霊ゴースト』に襲われた夜のような組織間の取引現場があったり。もっとストレートに、組織のメンバーが死傷されたので『ご挨拶』に伺ったりするわけだ。




 そうした仕事をこなす中で、わかってきたこと。




 オヤジの組織は、七同盟崩壊後の新トーキョーの秩序の中では上位にいる。しかし、トップオブトップというわけではない。追い落とさなければならない組織の中には旧七同盟の組織をそのまま継承した連中もいて、そもそもの母体の大きさが違う。




 ただ、わからなかったこともある。




『亡霊』が言った、『やりすぎている』理由だ。



 

 オヤジの組織は『強化』犯罪組織の中でこれといって特別というわけではなかった。取り扱っている商売も、組織そのものの大きさも中の上。新興組織の中では、確かにかなりの勢いはあったが、それだけだ。これからさらに大きくなる可能性はあるが、それはどの勢力にも同じことが言えた。




 なら、『亡霊』はなぜオヤジとこの組織を狙うのか。




「『都市伝説の亡霊』がなぜオヤジを狙ったか、ですか?」



「てめえは不思議に思わねえか、他に狙う組織はいくらでもあるだろう。ここはトーキョーだぜ?」




 カシワバラ直下で働くようになって一月ほど経ってから、おれはミナトとそんな会話を交わした。

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