第3話 出会い

静かな朝だった。


窓の外に広がる都市は、まだ薄い光に包まれ、街の流れはゆっくりと目覚めつつあった。


ベッドの中で微かに意識を取り戻しながら、ぼんやりと天井を見つめる。


「……朝か」


昨夜は引っ越しの疲れもあって、すぐに眠りについた。


しかし、完全に目が覚めるにはまだ時間がかかりそうだった。


枕元の時計を見るが、まだ早朝。


「あと少し寝ても……」




——その瞬間。 ピンポーン——。




軽い電子音が、寝起きの意識に鋭く響いた。


「インターホン?」


半分寝ぼけたまま、ゆっくりと体を起こす。


一体、朝っぱらから誰が訪ねてきたのか。


不機嫌そうに髪をかきながら玄関へ向かうと、ドアの向こうで微かに人の気配がする。


モニター画面に映し出されたのは、




——知らない顔だった。




黒髪は少し乱れ、表情には焦りが滲んでいる。


何かを言っているが、インターホン越しでは聞き取りづらい。


俺はゆっくりとドアに手をかけた。


「あー助かった!」


目の前の青年が、ほっとした表情を浮かべる。


「あ、ごめん、いきなりで……。俺は『早川 悠人(ハヤカワ ユウト)』って名前で今日このマンションに引っ越してきたんだ。でも、大家さんと鍵の受け取り時間を間違えたみたいで、まだ家に入れなくてさ」


彼は両手に荷物を持ち申し訳なさそうに笑いながら、額の汗を拭う。


何か言いたげな彼に事情を察したが、あえて俺からは何も言わない。


彼は、少し間を置いてから言った。




「ええと……。入れてくれない?」


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