040 アメリカのダンジョンにて
「下層の10区からは韓国っぽいダンジョンへ行けるから、そこで練習していたことがあるの。韓国の”おおた”ダンジョンは初心者向けのモンスターが多いってイメージだったな。このスーペリアダンジョンにもよく行っていてね、お気に入りなんだ」
「た‥‥確かに、敵も、ボスも、スーペリアそのものなのです‥‥」
ダンジョンによって出現するモンスターやボスの配置、層の深さは異なる。
だから、例えばとあるダンジョンを制覇していても、別のダンジョンには全く新鮮な気持ちで挑むことができる。必要な予備知識も違う。
このスーペリアダンジョンは中層が20区まである。
”<小沢たまき>:しずく”
全く流れないコメント欄で、そのたった1つのコメントが妙に浮く。
「どうしたの、たまき」
”<小沢たまき>:次から、配信の前に何やるかうちに説明してや”
「うん、分かった」
”<小沢たまき>:はぁ、ことの重大性を理解してへん‥‥まあええわ、今回はもう手遅れだから好きにしい”
「うーん、手遅れ‥‥? 分かった」
その言葉の意味は理解できないが、しずくは遠慮もせずどんどん、アメリカの土を踏んでいく。
「エミリーにとっては庭のようなダンジョンでしょ、どこまでなら行ける?」
「下層の12区までソロでいけますです」
「なるほど、じゃあお願いしちゃおうかな」
そのタイミングで、壊れたかと思っていたコメント欄が急に吹き出す。
”いやいやいやいやいや”
”エミリーちゃんなにナチュラルに受容してんだよwwwwww”
”少しは疑えよ現実を”
”大井にいたかと思ったらアメリカにいた、やばい俺病院に行ったほうがいいかもしれん”
”そこ本当にアメリカなの?”
”韓国にも行ってた気がする”
”韓国のおおたって大田? テジョン?”
”つーかこれ普通に不法入国じゃね?”
”↑日本とアメリカがつながってるとか普通思わんだろ”
”そうか、これって日本とアメリカが陸続きということになるんだ”
”さらっと日本アメリカ韓国の国防を根底から揺るがすなwwwwww”
”テラ国際問題wwwwwwwwww”
”壁は案外壊せる人多いから、あとは場所さえ分かれば自由に行き来できるってことか。場所はしずくちゃんにしか分からないけど、配信で開示しちゃったもんな”
”やべえ”
”この配信アーカイブ消される?”
”ダンジョンの中に関所できる?”
”↑関所できたとして誰が管理するんだよwww”
”幼女ちゃん、下層12区までソロでいけるって言わなかった!?”
”確かアメリカの最深記録って下層12区じゃなかった?”
”ぅゎょぅじょっぉぃ”
”待って、どうしてライセンス持ってない金髪ロリがアメリカの公的記録になってるの?”
”↑普通に大統領権限じゃね”
”ツッコミどころが多すぎてどこから突っ込めばいいか分からない”
コメントが爆速で流れるせいで、しずくには読み取れない。
大騒ぎになっていることは分かったが‥‥
(アメリカのダンジョンに入っただけなのに、こんなに騒ぐことなのだろうか‥‥?)
なんともリスナーとの温度差を感じる。
エミリーを抜きにしても、しずくはたまりに、ちょっとお出かけする気持ちで普通に行き来していた場所だ。
野菜を取りに行っただけで騒がれたときと同じように、全くぴんとこない。
開き直って、並んで配信のスマホカメラに顔を向ける。
「‥‥はーい。それでは下層12区までエミリーちゃんにお任せします!」
「任されましたです!」
「そういえば、12区まで行けるのに、どうして大井の下層5区で倒れそうになってたの?」
「大井の下層は暗いです。ここの下層はもう少し明るいです」
「なるほど‥エミリーちゃんって明るいところは強いの?」
「ユニークスキルが<
どちらかといえばダンジョンの中よりも地上のほうが強くなりそうなスキルだ。
「ちなみにまだ10歳だけど特例でライセンスを持ってるです。スタンピードのときに来てほしいからって」
「スタンピードって、大量のモンスターが地上に出てくるあれ? 確かに役に立つよね。ダンジョンにはいつから?」
「3年前です。スタンピードにあったとき、ママを守るためにわめいていたら、成り行きで街全体を守ることになって、そのときにライセンスをもらったです」
2人は普通に会話しているように見える。
しかし実際は、エミリーが駆け込んでくるモンスターを拳で殴りながら進んでいるのである。
”おーい保護者ちゃん???”
”ロリちゃん前見て!!!”
”前見て戦って!!!”
”しずくちゃんのダメなところうつってるwwwwww”
”中層14区の敵をいとも簡単そうに溶かすなwww”
”大統領この配信見てハラハラしてるだろw”
”↑それ以前に国防の大至急緊急会議に駆り出されて配信見れてない説”
”普通にありそうなのが困る、涼しい顔できるのほんとしずくちゃんだけだって”
「ちなみにそのスキルでどうやって飛行機の貨物室で生き延びたの?」
「懐中電灯を同時に3つつければ、体を保護できるくらいの魔力を出せるです」
「なるほど」
なんだかんだで簡単に中層20区のボス部屋まで行く。
「エミリーちゃん、拳以外の武器はないの?」
「ないです。拳一筋です、っと」
エミリーは一本の腕に力をためて、ぽかんと壁を殴る。
壁一面に、蜘蛛の巣のような巨大なヒビが走る。
「拳の硬さと威力には自信があるです」
「すごい」
「あたし、ワイルドです?」
「うん、ワイルドだよ」
「やったです!」
目を><の形にしてかわいらしくバンザイする幼女を見下ろして、しずくは(そういや私に弟子入する理由がそれだったな)と思い出すのだった。
”ロリかわいいwww”
”うん、確かにワイルドだな!(洗脳済)”
”エミリーたんハァハァ”
”↑通報しました”
”(英語)ここはスーペリアなのかい?”
”(英語)信じられない”
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