呪われし剣は服を許さず! 女体化した元男子、脱げば脱ぐほど戦闘力UP!? 最終的に全裸無双で世界を救うしかない件
自己否定の物語
第1話「何も守れなかった」
太陽が照りつける砂の闘技場――
俺は、胸元も腹も丸出しのビキニアーマー姿で、剣を構えていた。
観客席からは、割れんばかりの歓声と怒号。
目の前には、牙と爪を備えた、獣の化け物。
地面が揺れる。空気が震える。だが、俺の足は止まらない。
羞恥? 怖さ? そんなものは、もうどこにもない。
なぜなら、今の俺には――“力”がある。
布面積が減るほど、体の奥から満たされていくこの感覚。
理屈じゃない。けれど、確かに――戦える。
「見せてやるよ……これが、俺の――《現在地》だ!」
叫ぶ声は、すっかり女のものになっていた。
それでも俺は叫ぶ。誓う。もう、失いたくないから。
――けれど。
あの祠に足を運んだのは、すべてを失った、あの日だった。
あの日、俺は――何も守れなかった。
片腕は砕け、足は裂け、血まみれで剣を振った。
それでも敵の皮すら削れなかった。
仲間が、次々と倒れていくのを、俺は――見ているしかなかった。
……あのとき、俺を信じてくれた仲間の顔。
いまだに、脳裏から離れない。
だったら、もう逃げない。
今ここで、すべてをぶつける。
例え――この力の代償が何であろうと。
「――フルパージッ!!」
叫びとともに、光が弾ける。
視界が、白く染まって――
――あの祠に向かったのは、すべてを失ったあの日だった。
そう。あの日、俺は――何も守れなかった。
仲間が、目の前で倒れていくのを見ているしかなかった――
……あのとき、俺を信じてくれた仲間の顔。
いまだに、脳裏から離れない。
風が吹いて、誰かの鎧がきしむ音がした。
それ以外、何も聞こえない。
回復術師のリリアと戦乙女のカグヤも、黙って歩いてる。
数時間前までは、笑い声があった。
「頼りにしてるよ」なんて言葉もあった。
――信じてくれてた。
俺が、誰かを守れるって。
小さな丘に、二つの墓を作った。
木片で十字架を立てて、焼けた剣の欠片を添えただけの、粗末な墓。
でも、それが俺たちにできる精一杯だった。
「……ごめん」
ただ、それだけを呟いて背を向けた。
「俺、冒険者を辞める」
誰に向けてでもなく、小さく吐き出す。
「ふざけるな」
ぴたりと、カグヤの声が止まった空気を切る。
振り返らなくても、あの氷みたいな目が浮かぶ。
「お前がいないと、私が前線に出るしかなくなる。盾役がいないと、やってられん」
「それ、誉めてる?」
「事実を言ったまで」
彼女は相変わらず、必要最低限しか言わない。
でも、それはたぶん、精一杯の労いなんだろう。
リリアが、俺の腕に布を巻いてくる。
裂けた袖の隙間から、血がにじんでいた。
「もう少ししたら、癒しの術をかけ直すね……」
「いや、もういい」
「……え?」
「今日で終わりにするんだ。俺は――もう、十分だよ」
リリアの手が、少し震えた。
けど、何も言わずに、ただ小さく頷いた。
夕焼けが、地平を真っ赤に染めている。
目的地は、村外れにある古い祠。
地元じゃ有名な“抜けない剣”が刺さってるとかなんとか。
“強くなりたい者だけが抜ける”――そんな伝承もあるらしい。
最後にちょっとだけ見に行って、それで終わり。
どうせ俺には抜けっこないし、強くもなれない。
ただ、もし――
もしも本当に抜けたなら。
……そしたら、ほんの少しだけ、笑えるのかもしれない。
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