静かな町は、青春の舞台となる。⑥

 スーパーを出禁になってから、コンビニを回ってみたが、どの店でも冷たい対応をされしまった。

 店の裏側に連れていかれる前に必ず住所を聞いてくる。他の人には聞かないのに......。

 家に帰って俺は思考を巡らせる。

 おそらく、牧峰本町にいる人達は、二丁目在住の人に差別意識を持っている。

 となると、店に行くたびに、毎回必然的に引きずられて店の裏へ連れていかれる。そんなのごめんだ。

 なぜ差別意識を持っているのかは分からないが、不動産が言っていた『ワケあり』はこういうことなのだろう。なんて優しい人だったんだ。

 だが、俺はこの町......いや、この家を離れるつもりはない。静かな環境で小説を書くため。そして、ラノベ作家として華々しくデビューするため!!

 買い物なら、駅を経由して隣町へ行けばいいだけの話だ。


「待ってろ、本町!!俺が大人気ラノベ作家になったら、たちまち二丁目は住人であふれかえるぞ!!」


 なんて息巻いていると、玄関のチャイムが鳴った。


「次から次へと、めんどくさいなぁ。」


 重い腰を上げ、玄関へ向かう。

 ドアスコープもとい、入口から覗くと―—そこには美少女、ではなく前髪で顔の大半を隠した、地味な女の人が立っていた―—。


「めんどい予感しかしないのだが......。」

 

 そこの人、廃墟同然の家になんの用ですか?

 

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