第5話 生徒会役員との自己紹介

 まんまと星奈さんの策に嵌められた後、生徒会の活動時間となりメンバーが集まってきた。

 と言っても人数は少なく、僕と星奈さんを合わせて五人だったが。

 内訳としては会長と副会長、書記、会計、庶務がそれぞれ一人ずつだ。

 そして、各自自己紹介をすることとなった。


「ぼくが三年生で生徒会長の山崎やまざき健斗けんと、以後よろしく」


「アタシが三年生で副会長の大井おおい加奈かな、よろしくね」


「わ、私は二年生で書記の金川かながわめぐみです。よろしくお願いしますっ!」


 会長が優等生そうな見た目で、副会長が活発で髪を二つに結んでおり、書記の人はおかっぱで眼鏡をかけている。

 そして、ぼちぼち生徒会の最初の仕事が始まる。

 取り仕切るのは会長と胡蝶先生だ。


「じゃあ自己紹介も終わったことだし、早速生徒会の活動をするよ。まずは今度行われる新入生歓迎会の装飾の準備だ」


「装飾に使う折り紙はこっちにあるから好きに使って」


 新入生歓迎会の準備を新入生がするのか……なんかなぁ~。

 まあ文句言っても仕方がないし、別に嫌なわけでもない。

 さっさとやって帰ろう。

 そうして、各自黙々と折り紙で装飾を作る。


「……ッしまった、カッターが……」


 ……!

 星奈さんの白くてきれいな指に傷がついてしまった!

 早く消毒して絆創膏を貼らないと!


「星奈さん! 消毒液をかけます、少し痛いと思いますが、我慢してください」


「あ、ああ、わかったよ……」


 そうして僕は消毒液と絆創膏とティッシュを取り出してから星奈さんの手をガラスの器を扱うように持ち、消毒液をかける。

 そして素早くティッシュでふき取ってから絆創膏を巻き、応急処置を完了させる。


「はい、終わりましたよ星奈さん……星奈さん? 僕の顔じっと見ていますけど、何か付いてますか?」


「……! いや、何でもない。気にしないでくれ」


 まあ星奈さんが気にしないでというなら気にしないでおこう。

 そんなことがありながらも、生徒会の初仕事が終わった。


「はーあ、やっと終わったわ……」


「お、お疲れ様です……」


「よーし、今日は終わりですよね、先生?」


 みんな各々の反応をするが、一様に疲れているみたいだ。


「そうね、みんなお疲れ様。予定していた量は出来たし、今日は解散よ!」


 やっと終わったー。

 さーて、疲れたし何か自分に対するご褒美にジュースでも買っていこうかな~。

 そうして学校の一階に設置されている自販機へと向かう。

 硬貨を入れる音が廊下に響く。

 すると、後ろから誰かが歩いてくる音が聞こえた。


「やあ、蒼君。何を買っているんだい?」


「オレンジジュースです。ここの会社のジュースが好きなんですよ」


 自販機のボタンを押し、ペットボトルが落ちる音が二人の間に響く。

 静寂がしばらく場を支配した後、星奈さんがその静寂を破った。


「……さっきは助かったよ、ありがとう」


「あぁ、絆創膏の件ですか? それなら気にしないでください。昔の僕もそんな感じでしたから」


 昔はよく転んでけがしてたな~。

 そのたびにお母さんが絆創膏を貼ってくれたっけ。

 そんなことを思い出しながら星奈さんと雑談をする。

 星奈さんはどうやらコーヒーを買うようだ。

 お互いベンチに座りながら飲み物を飲み終わると、星奈さんがおもむろに立ち上がり、僕をあることに誘ってきた。


「蒼君、明日明後日は休みだけど、どっちか空いているかい?」


「日曜なら空いていますよ、土曜は友達と遊ぶんで無理ですけど……」


「それなら私の買い物に付き合ってくれないか? ちょっと父親の誕生日プレゼントを選ぶのに男の人の意見が欲しくてね。頼む、こんなことを頼めるのは君しかいないんだ!」


 そう言って、星奈さんは勢いよく手を合わせながら頭を下げてくる。

 さすがにもうデートみたいだと取り乱したりはしない。

 そ、そう、取り乱したりなんか、してないよ!

 それに、そんな真剣に頼み込まなくても予定空いているから受けるんだけどな……。


「いいですよ、僕でよければ付き合います」


 そうして、星奈さんと休日にショッピングモールへ行くこととなった。

 星奈さんは約束を取り付けると、まだ感情の処理が終わっていない僕を置いて、足早に去っていった。

 翌日の午後、東と新胴と一緒に僕の家でゲームをする。


「よし、新胴! 必殺技を食らえ!」


「はいガード~、東ざんねーん!」


「あぁぁぁ! クソ、ずりぃぞ!」


 コントローラーのボタンを押す音がうるさいほど部屋に響く。

 ったく、僕を放っておいて盛り上がっているな……。

 ここは、死角から急襲してやろう……。


「うお、蒼、何も言わずに攻撃してくるなよ、びっくりするじゃないか」


「お前が喋りすぎなんだよ、東。恨むんならお喋りな自分を恨むんだね!」


 そんな軽口を言い合いながらゲームをプレイすることはや三時間、まだまだこれからというところで、スマホの通知が鳴った。

 どうやら星奈さんからのようだ。

 何だか揶揄われそうなので、二人に画面が見えないようにしながら連絡の内容を確認する。


(明日の集合時間は十時でいいかな? 買い物ついでに何かお昼でも奢るよ)


 わかりました、いいですよっと。

 さーて、明日が楽しみだな~。


「ん? 何だか蒼が急に強くなった気がする……?」


「あはは、気のせいだよ新胴~」


 そうして上機嫌になっている自分に気付いていないながらも、三人で楽しく遊んだのだった。

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