第53話 『合格発表、運命の分岐点』
三月中旬。卒業式の熱気がまだ冷めやらぬ中、県立富岳高校の三年生たちにとって、本当の試練の瞬間が訪れた。公立大学の合格発表。西山和樹は、月島咲良と共に、合格発表の掲示板が設置された大学へと向かっていた。彼らの胸の内には、長年の努力が報われるかどうかの、大きな期待と、そして張り詰めた緊張感が入り混じっていた。
大学のキャンパスは、合格発表を見に来た受験生とその保護者でごった返していた。希望に満ちた顔、不安に歪んだ顔、そしてすでに結果を知って肩を落とす者たち。様々な感情が渦巻く中、和樹と咲良は、掲示板の前に立った。
無数の受験番号が羅列された掲示板の中から、和樹は自分の受験番号を探した。視線が滑り、やがて、その数字を見つけた瞬間、和樹の胸に熱いものがこみ上げた。
「あった……!」
和樹が小さく声を漏らすと、隣の咲良が、緊張した面持ちで和樹の指差す先を見た。そして、咲良自身の受験番号も、そのすぐ近くにあった。
「合格……!」
咲良の瞳が、驚きと喜びで大きく見開かれた。その顔は、一瞬にして、花が咲いたように輝いた。和樹は、思わず咲良の手を取り、強く握りしめた。
「咲良!やったな!合格だ!」
「うん……!和樹くん……やった……!」
二人の間には、言葉にならない喜びと、長年の努力が報われた達成感が満ちていた。和樹にとって、咲良との共通の目標が達成されたことは、何よりも嬉しいことだった。彼の長年の片思いが、大学合格という形で、さらに強固な絆となって結びついた瞬間だった。
和樹と咲良が、合格の喜びに浸っていると、スマートフォンが立て続けに震えた。友人たちからのメッセージだ。
『和樹くん!私、〇〇大学、合格したよー!』
山本結衣からの明るいメッセージ。すぐに佐々木梓、小林遥、高橋梨花、伊藤楓からも連絡が入った。彼女たちも次々と第一志望の国立大学に合格していた。
『西山君、私も合格したよ。ありがとう』
梓からのメッセージは、いつも通り控えめだが、その奥には和樹への深い感謝が込められているのが分かった。和樹は、彼女たち全員が同じ大学に進学するという設定が確定したことに安堵した。
その日の夜、和樹は咲良の自宅にいた。合格の祝杯を上げるべく、咲良の家族がささやかなパーティーを開いてくれた。咲良は、いつもより頬を赤く染め、和樹の隣で幸せそうに微笑んでいる。
パーティーが終わり、リビングで二人きりになった時、咲良は和樹の腕にそっと頭を乗せた。
「ねえ、和樹くん……本当に、本当にありがとう。和樹くんがいてくれたから、私、ここまで頑張れたんだと思う」
咲良の声は、心底安堵したような、そして和樹への深い感謝が込められていた。和樹は、彼女の頭を優しく撫でた。
「咲良が頑張ったからだよ。俺は、ただ隣にいただけだ」
「そんなことないわ。西山くんが隣にいてくれたから、私は安心して受験に集中できたの。それに……」
咲良は顔を上げ、和樹の瞳を真っ直ぐに見つめた。その視線には、揺るぎない愛情が宿っている。
「それに、最近、西山くんに癒やしてもらう時間が、私にとって、どれだけ大切だったか……」
咲良の言葉は、和樹との肉体的な繋がりが、彼女にとっての精神的な支えとなっていたことを明確に示していた。和樹は、彼女の言葉に、胸が熱くなるのを感じた。
「ねえ、西山くん……私たち、大学でもずっと一緒ね。これから、もっと、もっとたくさんの思い出を作っていこうね」
咲良の言葉には、和樹との未来への確かな期待が込められていた。和樹は、彼女の頭を優しく抱き寄せた。咲良との未来が確実になったことへの深い喜びと安堵が、和樹の心を包み込んだ。
翌日以降、和樹は、合格の喜びを分かち合うために、他の女子たちからも連絡を受けた。それぞれが和樹との「深いリラクゼーション」を求める声が上がった。
「和樹くん、合格祝いに、もっと気持ちいいことお願いしてもいい?」
山本結衣からの明るい誘い。
「西山君、今日、家に来れない?合格のお祝いに、二人でゆっくり過ごしたいんだけど」
佐々木梓からの控えめながらも明確な誘い。
高橋梨花からは、「和樹くん、私の限界、もっと見てくれる?」といった、刺激的な誘いも来た。
和樹は、彼女たちの喜びに応え、それぞれの自宅を訪れた。合格の安堵感の中で行われる「深いリラクゼーション」は、これまで以上の解放感と快感を伴った。しかし、和樹の心の中では、咲良との未来が、何よりも優先されるべき「本命」として、確固たる位置を占め始めていた。他の女子たちとの関係は、彼らにとって高校時代の「特別な思い出」として整理されていく過程に入っていた。喜びと、別れの予感が交錯する中で、和樹の心は、咲良という「本命」へと、強く傾き始めていた。
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