第9話 『佐々木梓の誘い、プライベートな空間で』

 六月下旬の土曜日。西山和樹は、どこか浮き足立った気分で自宅の最寄りの駅から電車に揺られていた。今日の目的地は、佐々木梓の自宅だ。昨日、彼女から「もっとじっくりマッサージしてもらいたいから、週末に家に来てもらえないかな?」とメッセージが届いた。和樹は一瞬躊躇したが、プライベートな空間でのマッサージ、しかも1対1という状況に、抗いがたい期待が胸に膨らんだ。


 梓の家は、駅からほど近い閑静な住宅街にあった。インターホンを鳴らすと、すぐに梓が出迎えてくれた。彼女は普段の制服姿とは異なり、淡いピンク色のゆったりとしたTシャツと、膝丈のショートパンツというラフな格好だった。そのTシャツの襟元からは、白いノンワイヤーブラのストラップがわずかに見え隠れしていた。自宅ということもあり、彼女の髪は普段よりも少し無造作にまとめられていたが、それがかえって親密な雰囲気を醸し出していた。

 「西山君、よく来てくれたね。上がって」

 梓に促され、和樹はリビングに通された。リビングはシンプルながらもセンス良くまとめられており、壁には梓が書いたのだろうか、美しい書道の作品が飾られていた。


 「どこでマッサージしようか?」

 和樹が尋ねると、梓はリビングの中央にある大きなソファを指差した。

 「ここでいいよ。ゆったりできるから」

 梓はソファに横になり、和樹は彼女の頭側に座った。

 「今日はどこが特に辛い?」

 和樹が尋ねると、梓は深いため息をついた。

 「最近、やっぱり受験のことで頭がいっぱいで、全身がカチカチなの。特に、肩から背中、腰にかけてが酷くて……。あと、足もむくんでて」

 梓はそう言って、ゆったりとしたTシャツの裾を少しだけ持ち上げた。和樹は、その仕草にドキリとした。

 「じゃあ、まず肩から。力加減は、いつも通りでいい?」

 「うん。和樹君に任せるよ。それに……もっと、もっとリラックスしたいから、これ、脱いでもいいかな?」

 梓はそう言って、着ていたTシャツの裾に手をかけた。和樹はごくりと唾を飲み込んだ。彼女の言葉は、まるで彼の心を読み取ったかのようだった。

 「あ、ああ……無理はしなくていいからな」

 和樹が震える声で答えると、梓はゆっくりとTシャツを脱ぎ始めた。ふわりと彼女のシャンプーの香りが一層強く漂い、和樹の目の前には、白いノンワイヤーブラに包まれた梓のバストが露わになった。ブラジャーはシンプルだが、カップの縁には繊細な刺繍が施され、それが彼女の肌の白さを際立たせている。梓のバストは、Cカップと聞いていたが、和樹が想像していたよりもずっと丸みを帯びており、ブラジャーの中で豊かに揺れるのが見て取れた。彼女の肩から背中にかけてのラインは、ブラジャーのストラップによって美しく強調されている。


 「じゃあ、お願いね」

 梓は少し恥ずかしそうにしながらも、目を閉じて和樹に身を委ねた。

 和樹は深呼吸をし、緊張した手つきで、直接梓の肌に触れるマッサージを再開した。指の腹でゆっくりと肩の筋肉を揉みほぐし、そのまま背中へと滑らせていく。梓の肌は、驚くほどきめ細かく、ほんのりと温かい。ブラジャーのサイドベルトが肌に当たる感触、カップの下縁から続くバストの重み。和樹は、彼女の背中を撫で下ろすたびに、ブラジャーの生地の薄さや、その下の肌の温もり、そして僅かな凹凸までもが指先に鮮明に伝わってくるのを意識した。彼の指が梓の背中を滑るたびに、彼女の吐息が甘く、深く、リビングに響いた。


 「はぁ……気持ちいい……」

 梓がうっとりとした声で呟いた。和樹は、彼女の背骨の両脇を親指の腹でゆっくりと辿ると、梓の身体がビクリと小さく震えた。

 「梓、ここ、かなり張ってるな。もしかして、生理前とかか?」

 和樹が問いかけると、梓は少し驚いたように目を開けた。

 「え……うん、そうなの。和樹君、なんでわかるの?」

 「なんとなく、身体の張りがいつもと違う気がしたんだ」

 和樹が答えると、梓は安心したように微笑んだ。

 「すごい……和樹君、本当に女子の身体のこと、よく分かってるね。私、生理前になるといつも腰が重くなるから、そこもお願いしてもいいかな?」

 「もちろん。腰もゆっくりほぐしていくよ」

 和樹は、彼女のショーツのゴムのラインぎりぎりまで手を伸ばし、腰から臀部にかけて優しく揉み始めた。梓の腰は、ノンワイヤーブラジャーと同じく白いシンプルなショーツに包まれており、ヒップハングタイプのため、その豊かな曲線がはっきりと見て取れた。和樹の指先は、ショーツの生地越しに、弾力のある臀部の感触を捉え、わずかに熱を帯びた肌の温もりを感じ取った。


 マッサージが進むにつれて、梓の身体からは完全に力が抜け、和樹の指に全てを委ねているようだった。彼女の表情は、恍惚としたようにとろけ、瞳は潤んでいた。

 「和樹君……私、和樹君にマッサージしてもらうと、本当に心が落ち着くの……身体だけじゃなくて、なんだか、心のモヤモヤまで取れていくみたい」

 梓はそう言って、和樹の手をそっと握った。その手は、汗ばんでいた。和樹は彼女の言葉に、胸が熱くなるのを感じた。そして、彼女の肌から漂う、わずかに興奮したような体臭が、和樹の嗅覚を刺激し、彼の内なる欲望を掻き立てた。


 マッサージを終え、梓はゆっくりと上体を起こした。彼女の顔はほんのり赤く上気しており、瞳はまだ潤んだままだ。

 「和樹君、本当にありがとう。こんなにリラックスできたの、久しぶり」

 「どういたしまして。少しは楽になった?」

 「うん、すごく。これで、また明日から頑張れる。……また、お願いしてもいいかな?今度は、もっと、じっくりと」

 梓の最後の言葉は、以前よりもずっと甘く、そして強い期待を含んでいた。和樹の身体は、その言葉に微かに震えた。彼女の瞳は、和樹の奥底を見透かすかのように、真っ直ぐに和樹に向けられていた。和樹は、その瞳の中に、マッサージによるリラクゼーションを超えた、新たな「甘い予感」が芽生えていることを感じ取った。

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