第7話 『咲良の隣で、特別な予感』
小林遥との個別マッサージから数日後。西山和樹は、月島咲良からの予期せぬメッセージに、内心で驚きを隠せずにいた。放課後、書道部の部室に来てほしい、と。他の女子からの依頼は増えていたが、咲良からの個別マッサージの依頼は、これが初めてだった。彼女はいつも、友人たちと一緒にいる時に和樹を巻き込む形だったからだ。放課後、いつもより鼓動が速いことを自覚しながら、和樹は書道部室へと向かった。
部室の扉を開けると、墨と紙の独特の匂いがふわりと漂ってきた。室内には咲良が一人、筆を洗っていた。彼女の黒髪のロングヘアが、濡れた指先から滴る水滴を肩で受け止めている。
「咲良、来たよ。どうした?」
和樹が声をかけると、咲良は振り返った。その顔には、いつもの涼やかな表情に加え、微かな疲労の色が浮かんでいる。
「西山くん、来てくれてありがとう。ちょうど書道が終わったところなの」
咲良は筆を置き、畳に座り込んだ。和樹も彼女の向かいに座る。
「最近、書道で肩が凝るのよね。集中しすぎると、どうも力が入っちゃって」
咲良はそう言って、自分の肩を軽く揉んだ。その仕草に、和樹は緊張しながらも、彼女の身体に触れる機会が訪れたことを認識した。
「確かに、書道は肩と首に負担がかかるからな。見せてみろ」
和樹は咲良の背後に回り込み、制服のブレザーの上から、そっと彼女の肩に手を置いた。咲良の肩は、見た目には華奢だが、触れてみるとしっかりと筋肉が張っていた。和樹は指の腹でゆっくりと肩の筋肉を揉みほぐし、首筋へと滑らせる。
「んっ……」
咲良の口から、微かな吐息が漏れた。和樹の指先に伝わるのは、制服のブラウスの薄い生地の感触。その下には、彼女が好む白や淡いピンクのシンプルなブラジャーが身体に吸い付くようにフィットしているのを想像させる、柔らかな膨らみが感じられた。和樹は、彼女のバストを包むインナーウェアの輪郭と、その下の滑らかな肌の感触を意識し、息をのんだ。咲良の髪から漂うシャンプーの、控えめながらも清潔感のある香りが、和樹の鼻腔をくすぐった。それは、他の誰とも違う、咲良だけの特別な香りだった。
和樹がさらに指に力を込めて凝りをほぐしていくと、咲良の呼吸が少し深くなった。
「はぁ……気持ちいい。和樹、本当に上手ね。さすが、一年生の時に色々調べてただけあるわ」
咲良の言葉に、和樹の胸の内が温かくなる。彼女の言葉は、和樹の努力を認め、彼を信頼してくれている証拠だった。
「もっと楽になりたいんだけど……これ、脱いでもいいかな?」
咲良はそう言いながら、自分のブレザーに手をかけた。和樹は驚いて目を丸くしたが、彼女の顔には、心地よさからくる安堵と、和樹への確かな信頼がにじんでいた。
「あ、ああ、もちろん。無理はしなくていいから」
和樹が頷くと、咲良はゆっくりとブレザーを脱いだ。制服のブラウス一枚になった彼女の背中が、和樹の目の前に広がる。ブラウスの薄い生地越しに、咲良のブラジャーのストラップのラインと、背中の滑らかな曲線がはっきりと見て取れた。
和樹は深呼吸をし、ブラウスの上から再度、咲良の肩や背中をマッサージし始めた。彼の指先は、布地を隔てていても、咲良の肌の温もりと、筋肉の微妙な動きを敏感に捉えた。
「咲良は、書道と受験勉強の両立で大変だな。無理しすぎないように」
和樹が労わるように声をかけると、咲良は小さく頷いた。
「ええ。でも、和樹がこうしてマッサージしてくれると、本当に助かるわ。あなたには、安心して任せられるもの」
その言葉は、和樹にとって何よりのご褒美だった。咲良からの「安心」と「信頼」という言葉が、和樹の心を深く満たしていく。長年の片思いが、今、物理的な距離だけでなく、心理的な距離も縮めていることを実感した。和樹は、彼女の背中を撫で下ろしながら、ブラウスの薄い生地越しに感じる彼女の身体の温もり、そしてその下に包まれたバストの柔らかさに、一層強く意識を集中させた。
マッサージを終えると、咲良はすっきりと晴れやかな顔で微笑んだ。
「ありがとう、和樹。これでまた、集中して勉強できそうよ。あなたのおかげだわ」
「どういたしまして。また辛くなったら、いつでも言ってくれ」
和樹は、咲良との1対1のマッサージが、他の女子とは異なる、特別な時間になったことを実感していた。彼女の身体に触れ、信頼の言葉をかけられたことは、和樹にとって、長年の片思いに対する確かな希望を与えてくれた。書道部室を出て、昇降口に向かう帰り道、二人の間に交わされた会話は、他の友人たちと話す時よりも、どこか親密で、将来を見据えたような、静かな温かさがあった。和樹の胸の内では、咲良への変わらぬ愛情と、彼女との関係が、これからどのように進展していくのかという、甘い予感が膨らんでいった。
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