第2章:触れ合う手、深まる信頼

第5話 『体育祭の熱気と、背中のライン』

 五月中旬。校庭には、熱気を帯びた歓声と、土埃が舞っていた。今日は、県立富岳高校の体育祭本番だ。西山和樹は、クラスのハチマキをきつく締め直し、競技に備えて体を動かしていた。周囲には、体操服に身を包んだ女子たちの姿が目に入る。普段の制服姿とは異なり、運動着は彼女たちの身体のラインをより鮮明に浮き上がらせていた。特に、タイトなTシャツの下にわずかに透けるブラジャーの輪郭や、運動によって強調される胸やヒップの曲線に、和樹の視線は無意識に引き寄せられる。


 最初の競技、クラス対抗リレーでは、陸上部の伊藤楓が圧倒的なスピードで他クラスのアンカーを引き離し、3年1組に大きなリードをもたらした。彼女がトラックを駆け抜けるたびに、鍛え抜かれたしなやかな太ももの筋肉が、運動着の短パンの下で躍動する。ゴールテープを切った後、荒い息を整えるために胸を上下させる楓の肩口からは、汗と彼女固有の体臭が混じり合った、力強い匂いが漂っていた。和樹は、その匂いを心地よいものだと感じた。


 大縄跳びでは、チームの呼吸が重要になる。女子たちは一斉に跳び、そのたびに運動着のTシャツが身体に吸い付き、汗で濡れた背中や胸のラインがくっきりと浮かび上がった。特に、バレー部の高橋梨花やバスケ部の山本結衣は、持ち前の運動神経でチームを引っ張っていた。彼女たちが跳躍するたびに、運動着の下のスポーツブラのラインがはっきりと見て取れ、和樹の視線はそこに釘付けになった。汗が首筋を伝い、Tシャツの襟元がはだけるたびに、彼女たちの健康的で引き締まった肌が露わになる。その肌からは、若々しい汗の匂いが立ち昇り、和樹の嗅覚を刺激した。


 競技が進むにつれ、生徒たちの疲労は蓄積していく。昼食を挟み、午後の競技が始まる頃には、多くの女子が肩を揉んだり、足を引きずったりしていた。

 特に、体育祭花形種目の一つである騎馬戦に参加していた高橋梨花が、競技を終えた途端に体育館の隅にへたり込んだ。

 「あー、もう無理!腕も肩も限界!」

 彼女はショートカットの髪を乱し、顔にはうっすらと汗がにじんでいる。同じく騎馬戦で奮闘していた山本結衣も、隣で大きなため息をついた。

 「私も全身だるい……こんなんで午後乗り切れるかなぁ」

 和樹は二人の元に歩み寄った。

 「大丈夫か?かなり疲れてるみたいだな」

 梨花が和樹を見上げ、懇願するように言った。

 「和樹くん……お願い!少しでいいから、マッサージしてくれないかな?この間してもらったの、すごく楽になったから」

 結衣も目を輝かせて頷いた。

 「私もお願い!和樹くんのマッサージ、本当に気持ちいいんだもん!」

 「ああ、もちろん。どこが特に辛い?」

 和樹は二人を体育館の隅、器具庫の影になる場所へと誘導した。他の生徒からは死角になる位置だ。


 まず梨花の背後に回り、運動着の上から凝り固まった彼女の肩に手を置いた。バレーと騎馬戦で酷使された肩は、触れただけでその張りが分かるほどだ。

 「かなり硬くなってるな。もう少し力を入れてもいいか?」

 「うん、大丈夫!むしろ、もっと強くしてほしいかも!」

 和樹は指の腹で梨花の肩甲骨の縁を深く押さえ、大きな円を描くように揉みほぐしていく。運動着の薄い生地越しに、梨花の身体の熱が掌に伝わる。彼女のショートカットから香る汗の匂いが、和樹の鼻腔をくすぐった。それは、運動によって活性化された、生き生きとした体臭で、和樹の嗅覚を刺激した。

 「んん……ああっ、そこ!梨花、そこが一番効く!たまらない……」

 梨花は、心地よさで身をよじり、甘い吐息を漏らした。和樹は、彼女の背中を撫で下ろしながら、運動着の下のスポーツブラのラインがくっきりと浮き上がっているのを意識した。汗でわずかに湿った生地が身体に吸い付き、その下の柔らかな肌の感触が、和樹の指先に微かに伝わってくる。


 次に結衣。彼女は腕の疲労を特に訴えていた。

 「和樹くん、腕と肩を!バスケでパス練も多かったから、もうパンパンで……」

 和樹は結衣の腕を取り、ひじから肩にかけてゆっくりと揉み上げた。結衣の腕の筋肉は弾力があり、スポーツを真剣にやっていることがわかる。

 「うわぁ……気持ちいい……」

 結衣の口から、甘い声がこぼれる。運動着の袖口から見える彼女の肌は、汗でわずかにしっとりとしていた。和樹の指が、結衣の腕の血管の浮きや、筋肉の繊細な動きを捉える。彼女の身体から発せられる独特の体臭が、和樹の意識を捕らえた。それは、スポーツによって活性化された、生き生きとした体臭で、和樹の嗅覚を刺激した。


 さらに、伊藤楓も和樹の元へとやってきた。彼女は長距離走とリレーで脚を酷使したため、足の疲労が激しいようだった。

 「和樹くん、私も足がもう棒みたいになっちゃって……」

 和樹は楓の脚を取り、太ももからふくらはぎにかけてゆっくりと揉みほぐしていった。楓の脚は、鍛え抜かれたアスリートの脚で、筋肉の線が美しく浮き出ている。

 「はぁ……たまらない……」

 楓の口から、深い、甘い溜息が漏れた。和樹の指が、運動着越しに彼女のしなやかな太ももの筋肉を捉え、その張りを感じ取る。和樹は、楓の運動着のズボンの下で、吸湿速乾性に優れたインナーウェアの生地が、彼女の肌にぴったりとフィットしている様子を意識した。その下にある、しなやかな肌の感触を想像すると、和樹の指先が微かに熱を帯びるのを感じた。


 マッサージを終えた女子たちは、皆、顔に安堵の表情を浮かべ、身体が軽くなったことに感謝の言葉を述べた。

 「和樹くん、本当にありがとう!これで午後も頑張れるよ!」

 「これ、体育祭の必需品だね!」

 和樹は、自分のマッサージが彼女たちの身体だけでなく、心まで癒やしていることを実感し、満たされた気持ちになった。彼女たちの運動着の下に隠された身体、汗の匂い、そしてマッサージ中に見せる無防備な表情は、和樹の心に、さらに深い関心と、秘めたる欲望を芽生えさせていた。

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