エルフ転生〜小さな精霊ハーレムを添えて〜

シャルねる

第1話

 赤ん坊の鳴き声がする。

 僕はマンションに住んでるけど、そんなに壁が薄い訳では無いと思うんだけど​──


 そこまで考えたところで、これが自分の声だということに気がついた。

 それと同時に、思い至った。……いや、思い出した。

 そっか、僕、死んだんだったな。

 ということは、これは転生……?


 目が開かない。

 赤ん坊だからかな?

 赤ん坊の頃の記憶なんて当たり前だけど無いし、よく分からないけど、僕は何とか頑張って目を開けることに成功した。


 開眼! ……なんちゃって。


「ぁぅ?」


 いつの間にか僕は泣き止んでいたみたいで、眩しい光を我慢して、なんとか見た目の前の光景は赤ん坊の僕よりも小さな6人の存在だった。




​───────​───────​───────




 僕が生まれて、7年の時が経った。

 どうやら僕はエルフに転生したらしい。

 最初はラノベの知識から「やったー! 寿命が伸びたぞ!」と思ったのも束の間。

 エルフの寿命は人間の時代に比べて、伸びたとかそういう次元の話じゃないことを知った。

 単刀直入に言うと、一定の年齢を超えた時から、不老になるらしい。

 やばくない? 絶対暇になるじゃん。

 まぁ、いっぱいゆっくりとこの世界を楽しめると思えば、悪くないことに気がついたから、もう気にしないことにしたんだけどさ。

 そもそも、僕はまだこの世界で7年しか生きてないし。そんな先の話、分からないよ。


 そして、僕は今日も精霊樹という僕たちエルフが信仰する大きな木の前で祈りを捧げていた。

 初めてこれを紹介された時、世界樹じゃないんかい! と思った僕は間違ってないはずだ。


 祈る理由は単純で、エルフは才能の差はあれど全員が全員精霊士の才能があるから、ここで自分と合う精霊に契約をするためらしい。

 毎日祈ってるんだけど、僕の元に精霊は一向に来てくれる気配は無い。

 2年前から祈り始めてるんだけど、僕はここで精霊の姿を見た事すらなかった。

 

 ……里の大人達は「そんなものだ」「気にすることない」「まだ2年だ」なんて言ってくれるけど、正直、赤ん坊の頃に恐らく精霊? を見たことがあったから、余裕だと思ってたからこそ、ちょっとだけショックだったりする。


 転生チートだと思ってたんだけど、全然そんなこと無かったらしい。


「はぁ。今日もダメか」


 そして、結局今日も僕の元に精霊は来てくれなかった。

 ……何となくいる気配はするんだけどなぁ。姿を現してくれないんだよ。


 エルフは普通の魔法を使えないみたいで、魔力だって精霊に借りて行使するものだから、精霊と契約をしないと、転生者特有の子供の頃にいっぱい魔力を増やすことができる、みたいなアドバンテージも無いんだよなぁ。

 

 何が言いたいのかと言うと、もう早くも暇なんだよ。

 この里、何も無いし。

 せめて同年代……いや、子供さえいてくれたら話は違ったんだろうけど、エルフは滅多に子供を産まないみたいで、子供すら居ないんだよ。

 僕が生まれたのなんて150年ぶりらしい。

 つまり、この里の中で1番若いエルフでさえ、150歳。……うん。遊んでくれるわけないよね。



​───────​───────​───────



 そこから更に5年が経った。

 僕は12歳になった。

 相変わらず精霊と契約は出来ていない。


 そろそろ大人たちも僕には才能が無いんじゃないか? と言い始めるようになった。

 もうこの頃には契約できてるのが普通らしい。


 正直、僕もちょっと諦めてきてる。

 一応毎日精霊樹に通ってはいるけど、最近は弓の方に力を入れてる。

 ……力を入れてると言っても、独学なんだけどさ。


 いやさ、最近、大人たちが僕を腫れ物を扱うような感じというか……なんか、異物を見るような視線を向けてくるんだよね。

 この12年で数える程しか会ったことがない親がいるんだけど、その親でさえこの前会った時、そんな視線を向けてきたんだよね。

 

 まぁ、エルフはみんな精霊士として生まれるみたいだし、精霊と契約できないなんておかしいよね。

 ……前世の記憶があるからかなぁ。

 エルフじゃなく、人間としての記憶があるから、精霊が僕に姿を見せてくれないのかなぁ。

 

 前世の記憶があるからこんな仕打ちでも大丈夫だと思ってたけど、前世の記憶がある故にこうなのかもしれないと思うと、ちょっとだけ考えものだな。



​───────​───────​───────



 15歳になった。

 僕は里を追い出された。

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