第4話
その時、訓練場の入り口から、声が聞こえた。
「おや、レイラ。また剣の稽古ですか。そんなことをしても、無駄だというのに」
そこに立っていたのは、レイラの兄、アリオスだった。彼の隣には、見慣れない男が二人いる。
「アリオス兄様……」
レイラの表情が、一瞬で凍りつく。
「その男は、誰ですかな? まさか、レイラの新しい遊び相手ですか?」
アリオスは、俺を侮蔑の眼差しで見た。
「無礼な! 彼はわたくしの婚約者、レオン様ですわ!」
レイラが怒りに震える。
「婚約者? まさか。こんな筋肉馬鹿が、レイラの婚約者などと。笑わせてくれる」
アリオスの言葉に、俺の理性がプツンと切れた。筋肉馬鹿だと? この俺を?
「貴様……!」
「レオン様、おやめください!」
レイラが、俺の腕を掴んで止める。
「アリオス兄様、これ以上、無礼な振る舞いをされるのでしたら、わたくしも考えがありますわよ」
レイラの声には、冷たい響きがあった。その瞳は、まるで氷のように鋭い。
「ほう? 何をされるというのですかな? もう、あなたには何もないでしょうに」
アリオスは、嘲笑うように言った。その言葉が、レイラの心を深く抉る。
「アリオス兄様……!」
レイラの体が、小さく震えた。
「おやめください、アリオス様!」
セレスティアが、アリオスの前に立ちはだかる。
「セレスティア、貴様もか。レイラに媚びへつらうだけの、役立たずめ」
アリオスは、セレスティアを突き飛ばした。セレスティアは、地面に倒れ込む。
「セレスティア!」
俺は、セレスティアに駆け寄った。
「大丈夫か!?」
「はい……わたくしは、大丈夫です」
セレスティアは、痛みに顔を歪めながらも、気丈に答えた。
「アリオス、貴様……!」
怒りが、全身を駆け巡る。レイラは、俺の隣で、ただ震えていた。
「レオン様、お願いです。わたくしのために、争わないでください」
レイラの声は、か細く、悲しみに満ちていた。
「レイラ様……」
俺は、レイラの言葉に、どうすることもできなかった。
アリオスは、勝ち誇ったように笑い、連れの男たちと共に去っていった。
その夜、公爵邸の自室で、俺はレイラとセレスティア、そしてアルフレッドと共にいた。
「レオン様、本日は、わたくしのために、本当にありがとうございました」
レイラが、深々と頭を下げる。
「気にするな。それより、セレスティア殿は大丈夫なのか?」
「はい、おかげさまで。レオン様が助けてくださったので」
セレスティアが微笑む。
「アリオス様は、昔からああなのです。レイラ様が聖女だった頃から、その力を妬んでおりました」
アルフレッドが、静かに言った。
「そうか……」
俺は、アリオスの言動の裏に、嫉妬があったことを知った。
「ですが、レイラ様は、決して諦めませんでした。聖女の力を失っても、人々のために、この国のために、尽くそうとされました」
アルフレッドの言葉に、レイラの強さを改めて感じる。
「そして、毒殺未遂の件で、全てを失ってしまったのですね」
俺が言うと、レイラは静かに頷いた。
「ええ。わたくしは、あの時、本当に絶望しました。もう、何もかも終わりだと……」
レイラの声は、震えていた。その瞳には、深い悲しみが宿っている。
「ですが、そんなわたくしを、アルフレッドは、セレスティアは、決して見捨てませんでした。そして、レオン様も……」
レイラの言葉に、俺は胸が熱くなる。
「俺は、レイラ様を信じている。そして、レイラ様の真実を、この世界に知らしめたい」
俺の言葉に、レイラは驚いたように目を見開いた。
「レオン様……」
「レイラ様、わたくしも、あなた様と共に戦います。どんな困難が待ち受けていようとも」
セレスティアが、レイラの隣に立つ。
「わたくしも、この老骨に鞭打って、レイラ様のために尽力いたします」
アルフレッドも、力強く言った。
「みんな……」
レイラの瞳から、大粒の涙がこぼれ落ちる。
「ありがとう……。わたくしは、もう一人ではないのですね……」
その夜、俺たちは、レイラの真実を世に知らしめ、彼女の汚名をそそぐことを誓った。
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