第23話 メイドの甘やかしと陰謀の匂い

「あれ、頭がぼーっとしていたような……

「ご主人様、食事の時間ですよ。シルヴィア様、ご主人様はこれからお食事です。膝から降ろしてください」



 シノンが銀色のカートをもって入ってくると俺とシルヴィアを引き離す。



「さっきのは解呪魔道具……あんた盗み聞きしていたわね」

「人聞きの悪いことを、主をツンデレエルフから守るのも仕事のうちですので。そんなことよりももう時間ですよ。お仕事にお戻りください。シルヴィア様」



 何やらシノンがささやくと、シルヴィアは名残惜しそうに部屋を出ていく。なんだか夢を見ていたような気分だ。



「さあ、カズキ様ご飯の時間ですよ。昨晩は眠気が浅かったようなので香草を多めにしたパンです。どうぞ」



 俺がシノンに向き直ると彼女は食べやすいサイズにちぎって「あーん」と差し出さしてくれる。



「うまい! シノンの料理は世界一だな! しかも、俺の健康もかんがえてくれてるんだろ?」



 某学マスのお姉ちゃんの料理とは違い味も良いから文句なしである。



「……お褒めに預かり光栄です。でしたら、今後一切、わたくし以外の者の手料理は口にしないでくださいね。あなた様の健康は、この専属メイドが、生涯をかけて管理いたしますので」

「え? 外食もだめなのか……?」

「そうですね……その時は私が同行させていただきましょう」

「え、でも、他の人とご飯をたべるときも……」

「私が栄養を管理させていただきますので、何か食べたいときはお付き合いさせていただきます。いいですね?」

「……はい」


 シノンは無表情のまま、しかし有無を言わさぬ迫力で言い切る。そして、俺がスープを飲んだ後の唇を、自分の白魚のような指でそっと拭った。



「あら、失礼いたしました。つい、ご主人様のお口が魅力的でしたので」

「いや、ハンカチでよくない!?」



 これって間接キスよりもレベルが高くないか? と思いつつ、彼女が自分の指を舐めるしぐさがなまめかしくて思わずドキリとしてしまう。



「あと、今日のお昼は商人との会食がありますので、こちらの服を着てくださいね」

「ああ、スケジュール管理から、服とか装飾品とかまで考えてくれてありがとう。もう、シノンがいなかったから俺は生きていけないぜ」



 そう、軽口をたたくと彼女はなぜか滅多に見せない笑顔を浮かべる。その瞳がどこか濁っているのは気のせいだろうか?



「それでいいではありませんか?」

「え?」

「あなたの全てを管理する私こそが正妻にふさわ……」



 やたらと熱い目でシノンが俺を見つめた時だった。バンッ!と勢いよく扉が開かれ、一人の騎士が血相を変えて飛び込んできた。



「も、申し上げます! カズキ様! 王都より、勅命です!」



 騎士が恭しく差し出した羊皮紙の巻物を受け取り、俺はそれに目を通す。そして、その内容に、俺の顔から血の気が引いた。



「……は?」


 そこに書かれていたのは、信じがたい内容だった。

『領主ホムラ・カズキに、不正蓄財及び要人と内通し、国を混乱に巻き込んだ嫌疑あり。直ちに王都へ出頭し、弁明せよ。然るべき申し開きがなければ、領地は没収、身柄は王家の名において拘束するものとする』



「な……なんだよこれ……俺、何もしてないぞ!?」



 不正蓄財?  国を混乱に巻き込んだ? 全く身に覚えがない。これは何かの間違いだ。



「……これは策略の気配がしますね、あの二人も呼びましょう」


 甘い空気は消えて一気にきがひきしまるののだった。



★★★



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