第12話 専属メイドと領主の仕事
「……なんで、俺の居場所が……」
「私はあなたの専属メイドですから。それよりカズキ様は何故このような場所にいらっしゃるのですか?」
「専属メイドすごすぎないか? まるで俺にGPSでもつけてるみたいだ!」
「じーぴーえすとやらは知りませんが、私の質問に答えていただいてませんよ」
や、やべえ! さすがにエロ本を買いに来たなんて言えない! 領主としての品格が失われそうだしやっと仲良くなったのに軽蔑されそう…… というかなんでこんなに怒っているんだ? まるで嫉妬している様な……
いや待て、そもそもこの世界の常識では男がエロ本を買おうとしたらどうなる?
そうか! この世界では、男が性的な物に興味を示すこと自体が、はしたない行為とされているに違いない! だから彼女は、俺が堕落しないか心配で、こんなにも怒っているんだ!
俺も女の子がエロ本を買おうとしていたらちょっとびびるもんな。
そう、結論に至った俺は、キリッとした真剣な表情でシノンに向き直った。
「すまない、シノン。君を騙すような真似をして。だが、これには深い訳があるんだ」
「……深い訳、ですか?」
「ああ。俺は領主として、民がどのような娯楽に興じているのか、この目で確かめなければならないと思った。この店が、民の心を惑わすような悪影響を及ぼしていないか……それを調査する必要があったんだ。決して、個人的な興味や欲望からではない! これは、領地経営のための、市場調査なのだ!」
そう、彼女が俺が叡智な本を買うのをはしたないと思い怒ってくれているならば仕事だと言えばいいのだ。我ながら完璧な言い訳である。エッチな浮世絵も美術品だと言えば堂々と飾れるのと一緒である。
俺の熱弁を聞き、シノンは一瞬目を伏せ、そしてゆっくりと顔を上げた。
「……なるほど。さすがは世界を救われた勇者様です。常に民のことを第一にお考えなのですね。感服いたしました」
シノンは深々と頭を下げた。よっしゃー! これで視察という名目で行けるな。何を買おうかな!
そう思った時だった。
「……ですが」
と、彼女は俺の服の袖を引っ張りながら続ける。
「そのような『汚れた』調査は、専属メイドである私が代行いたします。あなた様がその尊い御身を、このような低俗な場所で汚す必要は一切ございません。さあ、お屋敷に帰りましょう」
有無を言わさず、再び腕をがっちりと固められる。そのまま俺は、まるで罪人のように連行されてしまう。
てか、胸がむっちゃ当たってるんですけど……
それにしても調査すらさせてもらえないとは……! この世界は、どれだけ男の貞操を固く守ろうとするんだ! だが、いつの日か俺はこの楽園へと再び赴いて見せよう。
そう心に強く誓うのだった。
★★★
「全く……そういうことならば私になさってくれればいいのに……」
シノンはカズキにあえて胸を押し付けひきづりながらそう思う。もちろん、シノンは彼のしょうもない嘘なんて気づいていた。
彼女とて男女でベッドに入ることの意味は知っている。そのため昨日だってちょっとセクシーな下着を着こんでいるのだ。自分から襲ってもいいが、そこはやはり乙女心でありカズキの方から来てほしいと思っている。
ああ、でも、次はあえて泳がせてカズキ様の趣味を知るのもいいかもしれませんね。どんなプレイでも受け入れますよ、カズキ様。
聖女が好きならばセレスティアの服を勝手に借りて着てみるのもいいかもしれない。
無表情な彼女だが、カズキへの愛はセレスティアにも負けないつもりだ。そして、何よりも彼は……魔族との恋愛も問題ないと言ってくれたのが嬉しかった。
だが……
『化け物の血をひくものめ、近づくな!!』
そう言って故郷を追われた過去が思い出され一瞬顔が歪みそうになるが必死に抑える。カズキは自分が魔族のハーフとは知らない。ああは言ってくれたが真実を知ればどうなるか……それがこわくて一歩踏み出せないのだ。
「ん? 城に馬車が……」
「あれは……まさか……」
城の門にあるのはやたらと立派な装飾の馬車である。そして、掲げられている紋章には見に覚えがあった。
「一体、誰が……」
「ダメです。カズキ様。うかつに近寄っては……」
「ああ、カズキ様、ようやく会えましたわ。」
そこには高そうなドレスを身にまとう女性が馬車から降りてきて……カズキに笑顔を向けたあとシノンに向けてこういったのだ。
「あら、なんで、カズキ様は魔族の血を引いた娘をつれているんですの?」
「え、魔族の血……?」
きょとんとしたカズキ様のその言葉にシノンは目の前が真っ暗になるのを感じだ。
⭐︎⭐︎
シノンちゃんの秘密
カズキの服を着せる時にちゃっかり居場所のわかる魔道具を仕込んでるよ! メイドとして主人をサポートするためだから仕方ないね
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