吾輩は転生猫である。〜愛され幼女は恩を返す〜

@sato_kakumei

第1話 白猫は幼女ににゃる。

「……ん、にゃ…」


ふわふわした毛布と、あたたかな腕の感触。

心地よい温もりに包まれて、吾輩はゆっくりと目を開けた。


(…ああ、今日もいい朝にゃ)


公爵様——ナツメ=フォン=アランポの腕の中で眠るのが、吾輩の日課である。

これがまた、とっても居心地がいい。


(朝ごはんは……昨日の残りのテリーヌかな。いや、今日は新しい鶏肉が入荷するとか言ってたな……)


のそのそと起き上がろうとした、まさにそのとき。


「……あれ?」


視界に、いつもと違うものが映った。

目の前にあるのは——小さな、白い手。

ふわふわの肉球じゃない。

ぷにぷにの指が、五本。


「……え?」


吾輩は、思わず自分の体を見下ろした。


白い肌。

銀色の髪が、さらりと肩にかかっている。

猫耳も尻尾も、どこにもない。


「…にゃ?」


いや、声が出ない。いや、出たけど……にゃ、じゃなかった。


「…え、えっと…」


あたふたしているうちに、そばにいたアランポが目を覚ました。


「…シャルル?」


低くて優しい声。

公爵様の目が、吾輩を見つめる。


「おはようございます…」


つい口から出た言葉は、思ったより幼い声だった。

猫時代のクセで「にゃ」と言いそうになって、慌ててごまかす。


「…これは…どういうことだ…夢か…?」


アランポは困惑していたけれど、すぐに柔らかい表情になった。

その大きな手が、吾輩の頭をそっと撫で、抱き寄せる。


「……まあ、いいか。シャルルが元気なら、それでいい」


(え、いいの!?)


吾輩は公爵の腕の中におさまりながら、心の中でつっこんだが、まあアランポらしい。

過保護や溺愛ともいえるが、そういうところが好きだ。


(……とりあえず落ち着け吾輩。こういうときは、毛づくろい……じゃなくて、深呼吸だ)


「ふー……」


猫時代のクセで鼻を鳴らしそうになるのをぐっとこらえて、吾輩は静かに呼吸を整えた。


(うん。まあ、にゃるようににゃるだろう)


こうして、猫から幼女になった吾輩——シャルルの、新しい生活が始まったのだった。

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