星彩の召喚札師Ⅲ
くいんもわ
疑問ーShadowー
朝光
幼少時から過ごしてきた居場所はもうない。だが、その裏の顔を今知る事になろうとしている。
(メティオ機関……何が、あったんだろう)
孤児の保護とリスナーの養成を兼ねたメティオ機関と呼ばれる組織は今はなく、かつてそこで暮らし腕を磨いてきた彼女は改めて古巣を思う。
倒すべき相手は何かをもってメティオ機関を焼きつくし全てを奪った。そこにまつわる黒い噂の影が、その行動の意味を変えていく。
何が真実で何が正しいのかは見えない。自分が知る側面もまた事実として信じたいから。
(あたしの家……居場所……)
友がいて親代わりがいて、生きる術を身に着けた。そして失いはしたが、今もそこで学んだ事は活きている。
リスナーとしてまだまだ多くを学び、身につけ、そして相対して聞き出さねばならない。討つべき相手の真意を、その為に今できる事は何かを考えなくてはならない。
ーー
エタリラの大地に朝が来る。命が目覚めの時を迎える中で、彼女は深呼吸をしながら一枚のカードを手に空を見上げていた。
手にするカードは火竜のカード。指先に魔力を込めて掲げると赤き閃光と共に火竜ファイアードレイクは召喚され、その巨躯を現しつつ静かに彼女を捉える。
「何故呼んだエルク」
「あー、うん、なんとなく?」
適当に誤魔化すようなエルクリッドの背を鼻先で軽く小突く火竜ヒレイに、エルクリッドもまた微笑みつつその背に飛び乗りヒレイを空へと飛ばす。
何処までも遠く広がる空と眼下の世界をゆっくり進むヒレイは何も言わず、やがてエルクリッドが額につけるゴーグルを外して手に持ち見つめながら静かに口を開く。
「メティオ機関、って結局何だったのかな? あたし達が育った場所でもあるけど……リオさんの言うように裏の顔もあったみたいだし……」
物心つく頃に既に親はなく、まだ幼体であったヒレイと出会い暮らしてた所を保護された。
生まれつきあった力を理解し使えるようになり、今に繋がってるのも事実。最も長く共にいるヒレイもそれはわかりきっていて、エルクリッドの悩みも誰よりも理解できる。
「……少し飛べば施設の跡地に行けるがどうする?」
「ううん、今はいいよ。あんまり遠く行くと心配させちゃうし……今のあたしは、一人じゃないもん」
ゴーグルを額につけ直しながら答えたエルクリッドがぱんっと自分の両頬を叩き気を引き締め直す。
まっすぐ前を見て深く息を吐くのに合わせ、ヒレイもまた元の場所へと進行方向を変える。
(あたしは一人じゃない、ヒレイ達がいて……ノヴァ達もいる。大切な仲間……守れるようにならなきゃ)
仲間を守る為に強くなりたいとエルクリッドは願い、それは思いの強さとなってヒレイにも伝わっていく。
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