妹に襲われる夢を見た

神山フブキ

第1話 沙奈の夢

 始めは日常だった。


 食卓につくと、むかいに妹の莉奈りな。普段通り私は、剥く沸かすミキサーにかけるの3つしかできない莉奈の為に料理を作ったのだろう。目の前の肉じゃがは到底莉奈に作れるものではない。出張の多い母が作った訳も当然なく、いつものように私が作ったことは自明だ。

 莉奈は肉じゃがを口にすると、頬を緩ませて「美味しい、沙奈さな姉。世界一美味しいよ」とか調子に良い事を言ってくる。そんなに褒めてもおかわりしか出ないが?あとデザートぐらいなら即興で作るけど。


 そんな日常。

 だが、そこで視界は暗転する。

 違和感はなかった。脳がその事実に気づいていない。ただ、そのまま世界が動き出す。


 莉奈の部屋、そのベッドにいつの間にかいた。仰向けで私が寝ていて、腰辺りに何故か莉奈が乗っている。赤くて、少し恍惚とした彼女の顔。それは私には全く見覚えのないものだった。


「え、莉奈?」


 問いかけても何も返ってこない。その代わり、こちらに手が伸びてくる。莉奈は私の服の裾に手をかけ、脱がした。


「……ぇ?」


 絶句。私の胸が晒され、莉奈に驚愕の視線を向けた。


 しかし、莉奈は止まらない。構わず私の胸に触れて、手のひらに収める。

 ……正直私の、少し、ほんの少し小さめの胸が、ダイレクトで莉奈に伝わっているだろうことが嫌だったから、抗議の声をあげようとしたけど、かなわなかった。私が口を開いた瞬間、莉奈に私の膨らみの頂点にあるそれを強く摘まれた。抗議の声の代わりに出たのは自分も聞いたことのないような甘い声で、慌てて口をつぐんだ。それでも莉奈は止まらない。更にそれをいじり続け、私からは吐息と時折漏れる甘い声でしか出なくなってしまった。

 そんな状態が長く続き、私がとびきりの快感に達しそうになったとき、最後にそれを指で弾かれた。私の腰が跳ね上がって、叫ぶように、あえ


[[[ジリリリリリリリリリリ!!!]]]


  ×××××


 バッ!

 慌てて目覚まし時計を止めた。

 汗でぐしょぐしょになったパジャマが、体に張り付く。そして、耳が壊れそうなぐらいの心臓の鼓動。目の前が真っ白、浅い自分の呼吸がはっきりと感じられる。体全部痛い。


(……顔、洗うか)


 それでも、私に二度寝は許されない。莉奈と私の朝食を犠牲にすれば再び布団に潜ることもできるのだが、2ヶ月前に1回やらかした時の莉奈の少し寂しそうな表情を思い出すと流石にできない。


 パシャパシャ。

(……冷たい)


 水道から出てきたのは、想像の数倍冷たい水だった。普段なら慌てて顔をあげるぐらいなのに、熱くなった頭を冷やすには丁度良いと思ってしまった。

 顔をあげ、タオルで拭くと、やっと意識が覚醒してくる。物事に割ける分の意識がどんどん増えていき、それらの最初は「ご飯作ろ」とかになったのに、今丁度沼にはまった。つまり、こういうことである。


(さっきの夢って、……莉奈だよね?そういうこと莉奈にされてた……。こんな夢、初めて……、いや初めてじゃなきゃまずいんだけど、というか1回見ちゃった時点で駄目じゃない?夢で見たってことは、本当は莉奈に色々されたいってこと……、な訳ない!夢と欲望って結びつけられがちだけど、そうじゃないことだってあるし。そう、例えば不安!やっぱり私は莉奈に見捨てられるのが不安で、少し過剰だけど、莉奈に求められる夢を見たってことだ。そう、きっとそうだ。そうだよね?)


 パニック!

 まあ、そりゃそうだ。こんな場面でパニックにならない奴は流石にいない。

 ただ、そこでグツグツと音が鳴って改めて意識を取り戻す。


(え、お湯沸いてる!沸かした記憶ないのに、なんで?)


 まあつまりは、考え事をしながらの料理は危険だということだろう。

 私も気を引き締めることにし、それ以上考えないようにした。


(……あれ、作り終わった)


 しかし悲しきかな。無心の作業というのは、時に考え事をしながらよりも時間が速く進むものだ。とてもつらい。


 普段の行動をなぞるならば、次向かうのは莉奈の部屋。大体この時間なら、まだ寝てるだろう。いつもなら何も気にせずに叩き起こすんだけど。でも、今日は……。

 重い足取りでドアまで歩いて行って、着いた。


 私は心なしか自分の数倍も大きく見えるドアを弱々しくノックし、そして開けた。

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