第56話「ひよりへの告白」
#第56話「ひよりへの告白」
ハンターになってから一年以上が過ぎた。
この一年で俺の生活はすっかり変わった。
俺なりにひたむきに頑張った。強くなった実感もある。ある程度の収入も得られるようになった。
そしてこれからもハンターを続けるつもりだ。来週からは恩方ダンジョンの3階層に挑む。
だから――その前に、やっておきたいことがある。
それは、ひよりへの告白だ。これ以上待たせるわけにはいかない。
告白する場所は高級レストラン。何故この場所を選んだのかと言うと……エリナさんからチケットをもらったのだ。
「はい、これあげる」
エリナさんから差し出された封筒を受け取ると、中には上品なデザインのレストラン招待券が入っていた。
「あなたたちまだ付き合っていないって本当なの? さすがにまずいわよ。早く告白しなさい。今がタイミングとして丁度いいからこれ使って上手くやりなさいよ」
「……ありがとうございます」
全て見透かされていた。最初は余計なお世話とは思ったけど……告白しようと思っていたのは事実だ。高ランクハンターになると、スポンサーや店からこういう特典が回ってくるらしい。ありがたく使わせてもらおう。
約束の日。
俺とひよりは並んでそのレストランに入った。外観は少し高級そうで身構えたが、店内は思ったよりカジュアルな空気だ。客の多くはどうやらハンターらしい。
「わぁ、ここ素敵だね」
「ああエリナさんからもらった招待券だけど良い雰囲気で良かったよ」
その後はダンジョンの会話で盛り上がった。
「レン、明後日からの恩方ダンジョンは難しいから不人気なのでしょ。更にそこの3階層ってかなり危険だと思うよ。大丈夫?」
「難しいらしいけど大丈夫、ちゃんと準備してるよ。安全マージンも取って進めるから心配しなくていいよ」
「ならいいけど、絶対に無理はしないでよ」
前菜からメインまで様々な料理が運ばれてくる。とてもおいしい。でもそれよりも気になるのは告白だ。俺はどのタイミングで切り出そうかと迷っていた。このままでは食事の時間が終ってしまう。
食事と会話を楽しみながらも、俺は胸ポケットの中の小箱を何度も意識していた。
そしてデザートが運ばれてきたタイミングで、意を決して口を開いた。
「ひより、ちょっと聞いてほしいことがある」
「え、なに? 急に改まって…どうしたの?」
「ひより、これ……」
小箱を差し出すと、中にはシンプルなシルバーリングが光っていた。
「レン……これって……?」
「俺、ひよりのことが大好きだ。正式に付き合って欲しい。高校3年で1人なって絶望していた時に支えてくれたのはひよりだけだった。弟、妹にもやさしくしてくれた。その後、ハンターになってからも色んな人に助けられてきたけど、ずっと隣にいて助けてくれたのはひよりだけだった。本当にありがとう。感謝している。そして、これからもずっと一緒にいてほしい」
ひよりは少し驚いた顔をした後、ゆっくり笑った。
「……やっと言ってくれたね。私も、ずっとレンのことが好きだったよ」
「ごめん、その気持ちは分かっていたつもりだったけど、ふられるのが怖くて今まで言えなかった。もっと早くいえば良かったよな。ダンジョンで戦っている時よりも緊張したよ」
「ふふ、レンらしいね」
とひよりは軽く笑いつつも涙ぐんでいるようにも見える。待たせてしまって本当に申し訳ない気分だ。
その後、俺とひよりの手が重なり、指輪がはめられた瞬間――俺の心臓は今までで一番早く鼓動していたかもしれない。
その夜は幼馴染時代の昔の小さい頃のことなどを話しながら帰宅した。これまでに感じたことがないようなゆっくりとした時間が流れていた。そして、ひよりの自宅前まで送った。そこで俺は改めてひよりに伝えた。
「ひより、大好きだ」
「私もレンのことが大好き」
その後は少し沈黙の時間が続いたが……どちらからともなく初めてのキスを交わした。そしてその後に俺はひよりを強く抱きしめた。最高の時間だった。
そしてひよりは笑顔で何度も手を振りながら自宅に入っていった。俺も笑顔で手を振り返して見守った。
エリナさんには感謝だな。そして明後日からは……恩方ダンジョンの3階層に挑む。
ひよりの彼氏として恥ずかしくないように頑張っていこうと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます