第3話「ハンター制度の設立」

#第3話「ハンター制度の設立」


 やがて、各国で政府公認の“ハンター制度”ができた。


 モンスターはダンジョンから出ない。そんな定説が覆されたからだ。ダンジョンのエネルギー値が一定以上になるとモンスターは外に、すなわち現実世界にあふれ出てくることが分かった。


 詳細な理由は分からない。しかし浅層のモンスターは増えやすいようだ。そうなるとダンジョンのエネルギー値が上がるのだが、深層のモンスターにとってはダンジョンにモンスターが増えエネルギー値が上がると居心地が悪くなるのかもしれない。


 深層のモンスターが怒りだして浅層のモンスターに攻撃を仕掛け、その結果としてモンスターが溢れ出るのではないかと推測されていた。


 あふれ出てくるモンスターは様々だった。浅層の比較的弱いモンスターだけだったらまだ良かったのだが深層のモンスターも出てきた。


 地上で軍隊が対応したが厳しい戦いとなった。特に深層のモンスターは知能が高く、スピードは速く、力も強い傾向にあり討伐は困難を極めた。


 そうして大きな犠牲が出たことで対策が考えられた。



 真っ先に考えられたのがダンジョンの封鎖。爆発物などでダンジョンを潰そうとしたがそれはかなわなかった。ダンジョン内での火器が利用できない物理法則のためか大爆発を起こしてもダンジョンは全くのノーダメージ、潰すことは不可能だった。


 物理的にコンクリートなどで固めようとしても無理だった。まずダンジョン内部ではコンクリートは固まらなかった。またダンジョンの外は固まり、一見封鎖されたように見えたがやがてエネルギー値は高まり内部のモンスターがその分厚いコンクリートの壁を破って出てきたのだ。


 そして再びの地上での交戦で軍隊を含む多数の犠牲者を出した。



 そうして現実的な解決策として選ばれたのがダンジョンのエネルギー値が高くならないように比較的弱い浅層のモンスターを討伐するというものであった。


 これが最も安全な方法として推奨された。そしてその浅層のモンスターを討伐するのがハンターのメインの仕事だ。


 そしてそのハンターを管理するのが政府公認のハンター協会であり、それは“ハンター制度”によって統括されている。



 ダンジョンは日本だけでも200程度。ハンター協会は各地でダンジョンを管理した。そしてエネルギー値が測定され危険なダンジョンは優先的にハンターに依頼し浅層のモンスターが討伐された。


 最初は浅層のモンスターを倒すのが精いっぱいだったがレベルが上がったハンターはレベルアップすることで強くなり、少しずつ深層にも進出していった。


 深層に行くほどモンスターは強くなるが討伐した時の経験値は大きくなることも分かった。


 現実に浅層ではいくらモンスターを倒しても得られる経験値は少なく、なかなかレベルアップしなかったが深層でモンスターを倒すと得られる経験値が多く、比較的早くレベルアップしたのだ。


 また深層のモンスターは倒した時に宝箱を排出することが多いことが分かってきた。モンスターを倒した時に5%程度で宝箱を排出する。その原理は不明だ。


 宝箱は金、銀、銅の3種類。金は100%、銀は10%、銅は0.1%の確率で中身が入っていた。


・金箱:100%中身あり

・銀箱:10%中身あり

・銅箱:0.1%中身あり


 すなわち金の宝箱は確実に当たり。逆に銅の宝箱はほとんどが外れということだ。


 中身は"武具”、”使役モンスター”、”財宝”の3種類。


 武具と使役モンスターは戦闘に使えるが宝箱を開けた本人しか使えない。


・武具(利用は自分のみ)

・使役モンスター(利用は自分のみ)

・財宝(戦闘に使えない)


 その制度は、財宝がある以外はあのゲームにかなり近いものだった。


 金持ちはハンターが持ち帰った宝箱を買い漁り、使役モンスターと武具を揃え、すぐに最前線で名を上げていった。


 俺はテレビを見ながら、深く息を吐いた。


「なんだよ。現実世界でも、結局、また“あの頃”と同じかよ」


 努力も、工夫も、結局は“金”の前では無力。そう思っていた。


 だけど……まだ俺は、何も知らなかった。

“使役モンスター”との出会いが、俺の現実を変えることになることを。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る