いつまでも いつまでも

成瀬 慶

第1話 出会った夏

彼に初めて会ったのは・・・。

そうそう、あの夏の事だった。


私たち家族がこの町に越してきたのは、私が高校に上がった年齢だった。きっと、不器用な性格の私が進学するタイミングを待っての引っ越しで、弟の涼太(りょうた)は、小学3年生という中途半端な区切りになってしまい、幼稚園から一緒だった友達と別れることをギリギリまで嫌がっていた。全く知らない土地で一から友達ができるのだろうか?と不安に思っていたのだろう。

しかし、活発で社交的な涼太は、すぐにみんなの人気者となった。両親はそれを、想像できていたのだと思う。

夏休みになるころには、弟の周りにはたくさんの友達が集まるようになっていて、毎日のようにリビングではゲーム大会が開かれていた。母はパートタイムで働いていたため、今日も私は涼太の保護者役。付きっきりではないが、小学生だけを家で遊ばせておくわけにはいかないので、なんとなく視界に入る場所でスマホゲームをしていた。


ある日、


「涼太のお姉ちゃん。」


その声に顔を上げるとそこには可愛い女の子がたっていた。毎日のように家に集まる涼太の友達は、最近では固定されてきて、今日来ている4人は、ほぼ毎日入り浸っていた。その中で、唯一ひとりだけ女の子が混じっている事には、ずいぶん前から気が付いてはいた。それが彼女だ。

少し長めのショートカットで、透き通るように肌が白く、色素が薄いせいか?瞳はほんのりオレンジ色でかなりの美少女。きっとそれなりの年頃になったらモテるだろうな・・・と想像させる。


その子は仲間内でも涼太と一番の仲良しのようで、いつも二人は横並びに座り、ケラケラ笑いあってピッタリとくっついている。


”もしかして・・・彼女?”


”いや、まだ弟は小学3年生、いくらオマセだからって・・・まさかね”


”姉の私でも彼氏なんてまだいないのに、小学生に先を越されるなんてありえないしね”


心の奥でそんなつぶやきをしながら、目の前の美少女を見つめていると、


「涼太のお姉ちゃん可愛いね。」


そう言って天使のような笑顔をこちらに向ける。私はそれがあまりにか美しすぎて、数秒フリーズしたまま、それに見とれる。そして、”はっ”と我に返り、


「ありがとう、あなたも可愛いね。美人さん。」


そう私が言うと、その子はあからさまに表情を曇らせて涼太たちの所に戻っていった。それはなんとも切ない雰囲気で、よく分からないモヤッとした空気感が、私の心に残した。


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