第11話 『止めてくれたのは、誰だったのか』
「異常事態調査室」登録者数:1,138人 → 11,138人(+10,000)
投稿動画『止めてくれたのは、誰だったのか』視聴数:144,290回
──「異常事態調査室」も、ここまで来たか。
コメント欄での考察や切り抜きも増え、
「“アレ”の声、水島さんじゃなかったですよね?」
というDMまで届くようになった。
「……まさかここまで反響があるとは、正直思ってませんでした。
自分でも何が起きたのか、まだ整理しきれていないです。でも──
今日は、また別の“異常事態”を追っていきます。」
「今回は久々の外ロケです。初めて、リスナーさんからDMが届きました。」
配信画面にDMのスクショが出ている。
内容は……「地元の○○神社に夜中1時に行くと、誰かに止められる」という噂。
「神社で、誰かに止められる……? どういう意味なんでしょうか。とりあえず、現地に向かいます。」
夜の山道、神社の入り口。風で揺れる草木、鳥居が見える
「というわけで、着きました。ここが“○○神社”ですね。」
「……え、想像してたよりずっと……何もないなこれ。雰囲気、やばいです。」
「鳥居の先、街灯もほとんどないので、今日は手持ちのライトを使って進みます。」
『うわ、暗っ』
『なんか嫌な空気する』
『ライト心もとないな』
水島は静かに鳥居をくぐる
「じゃあ、行きます……」
(ガサ……風の音と小さな枝の揺れる音。ライトが揺れる)
「うわっ……今、右の林で何か動いたような……? いや、小動物かも。
でも一応……気をつけて行きますね。」
神社の社殿が見えてくる
「本殿っぽいの、見えてきました。石段の上……って──あれ?」
「え、あそこ……誰か、います?」
ライトが社殿前に立つ影をとらえる。が、すぐにライトを逸らす
「……今、いたよな? 誰か……立ってましたよね?」
『見えた』
『いたいた!』
『白っぽい服?』
『怖いってマジで』
『やめろよ…』
「……いま、少しだけ……「やめとけ」って声が聞こえた気がしました。」
「……今日は、ここまでにしておきます。これ以上は……危ない気がする。」
鳥居の外へ戻っていく。足音とライトの揺れだけが響く
《翌日の配信》
部屋で静かに座っている。前日とは違い、画面が少し明るい
「──で、これは動画を回していたときは知らなかったんですが……」
「翌日、あの神社の近くで……刺傷事件があったそうです。地元ニュースで見ました。犯人は逃走中とのことです」
「時間帯も……僕が行ってたのと、ほぼ重なってました。」
数秒の沈黙が流れた
「“止められた”のは……もしかしたら、“あっち側”じゃなくて、“こっち側”だったのかも……ですね。」
『え、こわ』
『まじでやばかったじゃん……』
『じゃあ止めたの誰?』
『ゾッとした』
『鳥肌やばい』
「みなさん、いつもコメントや感想ありがとうございます。
今回は、無理せず引き返して……正解だったかもしれません。」
「次回もまた、異常な“なにか”を追っていきます。
引き続き、見届けてください。」
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《動画コメントより(抜粋)》
👤なおこのとなりのひと
「やめとけ」って声、聞こえた気がしたの自分だけじゃなかった……鳥肌やばい。
👤匿名の通りすがり
影、見えた瞬間にカメラ引いたのって無意識っぽかった。水島さん、ほんとに“何か”感じたんだと思う。
👤@考察メモ垢
刺傷事件の時刻と重なってるの、ただの偶然にしてはできすぎてる。止めてきたの、絶対“あっち側”じゃない。
👤灯りが見えた
あの神社、地元だけど昔から「夜中は通るな」って言われてた。理由、こういうことかも……
👤観測者φ
「止められた」のは誰か──この言い回しがすでに怖い。
“未然に止めた存在”の方が、よっぽど異常じゃない?
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