第11話 『止めてくれたのは、誰だったのか』

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投稿動画『止めてくれたのは、誰だったのか』視聴数:144,290回


──「異常事態調査室」も、ここまで来たか。


コメント欄での考察や切り抜きも増え、

「“アレ”の声、水島さんじゃなかったですよね?」

というDMまで届くようになった。


「……まさかここまで反響があるとは、正直思ってませんでした。

自分でも何が起きたのか、まだ整理しきれていないです。でも──

今日は、また別の“異常事態”を追っていきます。」


「今回は久々の外ロケです。初めて、リスナーさんからDMが届きました。」

配信画面にDMのスクショが出ている。

内容は……「地元の○○神社に夜中1時に行くと、誰かに止められる」という噂。


「神社で、誰かに止められる……? どういう意味なんでしょうか。とりあえず、現地に向かいます。」


夜の山道、神社の入り口。風で揺れる草木、鳥居が見える


「というわけで、着きました。ここが“○○神社”ですね。」

「……え、想像してたよりずっと……何もないなこれ。雰囲気、やばいです。」

「鳥居の先、街灯もほとんどないので、今日は手持ちのライトを使って進みます。」


『うわ、暗っ』

『なんか嫌な空気する』

『ライト心もとないな』


水島は静かに鳥居をくぐる


「じゃあ、行きます……」

(ガサ……風の音と小さな枝の揺れる音。ライトが揺れる)


「うわっ……今、右の林で何か動いたような……? いや、小動物かも。

でも一応……気をつけて行きますね。」


神社の社殿が見えてくる


「本殿っぽいの、見えてきました。石段の上……って──あれ?」


「え、あそこ……誰か、います?」

ライトが社殿前に立つ影をとらえる。が、すぐにライトを逸らす


「……今、いたよな? 誰か……立ってましたよね?」


『見えた』

『いたいた!』

『白っぽい服?』

『怖いってマジで』

『やめろよ…』


「……いま、少しだけ……「やめとけ」って声が聞こえた気がしました。」

「……今日は、ここまでにしておきます。これ以上は……危ない気がする。」


鳥居の外へ戻っていく。足音とライトの揺れだけが響く


《翌日の配信》

部屋で静かに座っている。前日とは違い、画面が少し明るい


「──で、これは動画を回していたときは知らなかったんですが……」

「翌日、あの神社の近くで……刺傷事件があったそうです。地元ニュースで見ました。犯人は逃走中とのことです」


「時間帯も……僕が行ってたのと、ほぼ重なってました。」


数秒の沈黙が流れた


「“止められた”のは……もしかしたら、“あっち側”じゃなくて、“こっち側”だったのかも……ですね。」



『え、こわ』

『まじでやばかったじゃん……』

『じゃあ止めたの誰?』

『ゾッとした』

『鳥肌やばい』


「みなさん、いつもコメントや感想ありがとうございます。

今回は、無理せず引き返して……正解だったかもしれません。」


「次回もまた、異常な“なにか”を追っていきます。

引き続き、見届けてください。」




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《動画コメントより(抜粋)》


👤なおこのとなりのひと

「やめとけ」って声、聞こえた気がしたの自分だけじゃなかった……鳥肌やばい。


👤匿名の通りすがり

影、見えた瞬間にカメラ引いたのって無意識っぽかった。水島さん、ほんとに“何か”感じたんだと思う。


👤@考察メモ垢

刺傷事件の時刻と重なってるの、ただの偶然にしてはできすぎてる。止めてきたの、絶対“あっち側”じゃない。


👤灯りが見えた

あの神社、地元だけど昔から「夜中は通るな」って言われてた。理由、こういうことかも……


👤観測者φ

「止められた」のは誰か──この言い回しがすでに怖い。

“未然に止めた存在”の方が、よっぽど異常じゃない?

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