天魔遊技
勇崎りりは
これは世界で一番、愚かな物語
「知ってる?美織ちゃんがね、部活の後輩を虐めてたらしいよ。」
「え〜?美織ちゃんが?」
「昔はいい子だったのにね。」
三人の少女が教室の端で話をしていた。
「あ、そういえばさ、最近何かに乗っ取られたかのようになることがあるんだよね。美織ちゃんもそう言っていたらしいよ。」
「それは私もある!なんか声が聞こえてきて意識がなくなっていって……。」
「なにそれ、怖っ!」
その教室のロッカーの上にはナニかがいたように見えた。白い翼を持つものが、笑っていた。
これは、とある学園の裏で行われている行事。その一部を今、ここにいる皆さんにだけ特別にお見せいたしましょう。
そして、このことは決して口外しないよう、よろしくお願いいたします。
始まりは遥か昔、神の世での出来事でした。
人間が生まれるよりも前、2人の神による争いがおこったのです。
長きに渡り、二人の神は配下を巻き込み、地形が変わるほどの激しい戦争を続けました。
ひたすら争い続けて何千年も経つころ、人間という一定の頭脳を持つ生物が下界に現れました。
その生物は神と同じで2本の足で歩き、言葉を交わし、文明を発展させていきました。
神はその生き物を自らの支配下に置きました。神を模して作られた生物として。
そして人間を支配したことも忘れるくらい、長い時が経つ頃、神はまだ不毛な争いをしていました。
その頃には白い翼を持ち、仮初の優しさで配下を上手くコントロールしてきた神を天使神、黒い翼を持ち自己中心的で恐怖による支配を行っていた神は悪魔王と言う名称で呼ばれていました。
その配下達もそれぞれ天使、悪魔と呼ばれるようになりました。
この名称が決まった頃には天使は白い翼を、悪魔は黒い翼を持つようになりました。
人間はもうとっくに戦争を終わらせて平和にしようと動いていたのに…。
そんな中、天使に
「このまま何度も争いをしていると世界が保たない」、「神も王も名ばかり、争いを止める力もない。人間を見習うべきだ。」と。
そしてその天使はこうも言いました。「人間はスポーツと言う遊技で決着をつけているそうだ。人間を支配下に置いているのなら、数年に一度人間社会でイベントを開きそれで平和に決着をつけるべきだ。」そう言いました。
これが行事の、遊技の始まりです。
初め、長く生きた天使達はその意見を認めようとしませんでした。それでもその天使は仲間を想い、訴え続けました。話が悪魔達の耳にも入るほど伝え続けました。
それを知った天使神はその天使を呼び出しました。
天使神を前にしてもその天使は人間の素晴らしさを伝えようとしました。でも、天使神は自分でコントロールできない者がいるというのは認められず、「そんなに人間が好きなら人間として生きればいい」と言い、天使を堕天使とし翼を捥いで下界に落としてしまいました。
しかし、争いに疑問を持っていた若い天使や悪魔は下界を覗きながら人間が集まる場所、学校を見るようになりました。それを見た者たちはとても驚きました。人間たちは争いや喧嘩を一切やらずに、ルールを作り決着をつけ、それを楽しんでいたからです。
そしてそれを見た者たちはその天使の意見を訴え始めました。天使神や悪魔王はそれを認めざるを得なくなりました。
それから、天使と悪魔の争いは一気に変わりました。
一時休戦という形で下界を使うことになりました。3年に一度、優秀な者は下界に降り、人間界の学校と言う教育機関に姿を消して潜り込む。
天使や悪魔は人間の感情をコントロールすることができる故、その能力を利用して感情をより大きく揺らした方の勝ちになると言うものになりました。
それでトラブルになる可能性もありましたが姿を消した天使や悪魔を見ることができる人間を数年に一度ランダムに選び、審査員として決着をつけてもらうことで表面上は解決しました。
おどかしたり、喜ばせたり、悲しませたり、他の人に危害を加えるように仕向けたりなんでもしていいそうです。
これは今までの遊技の中で最も異例で尚且つ最も醜い。
『第26回 天魔対戦 東京校』で起きた出来事をお伝えしましょう
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