サイドストーリー09 カオリ先生二面性──「学校では生活指導、夜は“主任”」

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先生の一日:叱る手と支える手


 朝。正門前に“交通整理棒(赤点バージョン)”がスッと掲げられる。須賀カオリ、今日も無音で現着。白チョークで路面に登校動線(←静かに歩く/→走らない/↻爆発しない)と描き、視界に入る違反を瞬時に仕分ける。


「そこ、シャツ裾。はい、イン。――そのバッグは10kg加重を抜いて」

「は、はいっ!(サッちゃん)訓練モード解除しますっ」

「あと、その札『爆破洗濯モード』は没収。校内では“柔軟仕上げ”だけにしなさい」


 ユウトには視線だけで「保健室で20分睡眠」。リナには微妙な角度で会釈(22.5°)。通り過ぎる生徒がひそひそ囁く。「今日の先生、チョークの角度が厳しい……」


 職員室。没収カゴの中身は今日もカオスだ。リップ(校則色違反)×4、柔軟剤5L×1(誰のとは言わない)、無許可ドローン×1、なぜかフライパン(業務用)×1。


「フライパンは部活後に。まずは授業を“炒めず”に受けなさい」


 プリントの端に小さくメモ――*ユウトのクマ、濃い。昼は汁物必須/サッちゃん、札を作るなら“安全第一”から書く。


 廊下で小競り合いを見つければ、交通整理棒がカチン、と水平に。


「あなたたち、どうしたの、理由は?……聞いたわ。では任務に戻りなさい。報告は放課後。――走らない、怒鳴らない、笑顔は守る」


 怒鳴らないのに響く。通りすがりの一年が「先生、BGMに行進曲が聞こえます」と言い、カオリは無言でのジェスチャー。


 昼。家庭科室の臨時講習炎を使わない煮込み。IHは機器を使った家庭科実習、温度は死なない程度設定。サッちゃんの握り拳に木べらを装備させ、黙々と刻ませる。


「“待つ”のも訓練。筋肉は止められるから強い」

「はいっ(小声MAX)!」


 リナが横で蓋を**22.5°**だけずらし、「角度が恋を救うのよ」とか言うので、サッちゃんの顔が**+2.3℃**。ユウトが味見し、肩の力がふわっと抜ける。そこにカオリ、\*\*唐揚げ粉(大さじ1)\*\*のメモをそっと貼る(何度でも貼る)。


 放課後。屋上でユウトが頭を下げる。「先生、ありがとうございました」「礼は不要。帰り道は明るいルートを。ついでに唐揚げ粉は大さじ1」――三度目なので語尾が早口だ。


 左耳のインカムをコツコツ。声色が半音落ち、主任の輪郭が滲む。


 夜。JMK臨時ブリーフィング。壁面のスクリーンに市内の安全情報、先生の夜は長いのだ。スタンプ好きの若手がスタンプを多用するので、カオリが即ミュート。


「朝比奈邸は“日常の前線”。**無用な接触は禁止**。周辺の安全を優先」


 映り込んだ青いスポーツカーをマーク。「ABELは良い。素晴らしい機体だ。――KAINは……私より小言が多い。助かる」


 帰りのコンビニでサッちゃんと鉢合わせた。「先生! 夜食の補給ですっ♥」「**粉は大さじ1**。……あと、これ」――消防認定の消火ボールをカゴへ滑り込ませる。「お母さんですか?」と店員に聞かれ、二人同時にフリーズ。**レジは世界で一番の戦場**である。


 そのままサッちゃんを朝比奈邸まで送る。この街は物騒だからな。


「先生、学校のときとちょっと違いますよね」

 玄関でユウトが言う。


「学校では**叱る手**。ここでは**支える手**。同じ手よ。対象が変わるだけ」


 扉が閉まりかけ、ふと振り返る。「それと――**唐揚げ粉は大さじ1**」


 **カチ**。インカムが鳴り、主任に戻る。夜空は静か。珍しく屋敷は爆発しなかった。……その瞬間、庭の端*ポンッとささやかな破裂音。皆が振り向くと――


「先生の置き土産:**クラッカー(おめでとう、無爆発!)**」


 KAIN〈ログ〉「本日、構造被害0。笑顔指数+0.62。結論:**二面性ではなく“二つの手”+“大さじ1”**」


 明日、また何かが爆発してもいい。叱る手と支える手が、必ず“おはよう”に戻してくれるから。

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