時の檻と、出会うはずのなかった“自分”

■ 異常現象検知:時空位相の多層化

■ 状態:時間の歪み、並列存在の接近

■ 地点:神律自由連盟・星環本拠アルネヴァの丘




◇ ◇ ◇


 「……おかしい。さっきまで確かに、太陽はこの位置じゃなかった」


 リーネが空を見上げて呟いた。


 空は裂け、星々は“逆に”瞬いていた。

 風の流れが、まるで“時間そのもの”を逆再生しているかのようだった。


 「世界の軸が、少しずつ……壊れ始めてる」


◇ ◇ ◇


 アキトはその夜、一人で神木の下に立っていた。

 “絶対存在コード”が覚醒してから、彼の周囲の空間は常に不安定に揺れている。


 (俺のせいか……? 秩序を壊したことが……)


 「いや、そうじゃない」


 その声は、突然、彼の後ろから聞こえた。

 振り返ると――


 そこには、アキトとまったく同じ顔の男が立っていた。


■ 謎の存在:並列時空体アキト・コード・Ver.0

■ 原点時間:神胎領域での再定義以前の“未覚醒のアキト”

■ ステータス:存在反響体(パラレルエコー)




「お前……まさか、俺か?」


 「そうだ。お前が“存在を選んだ瞬間”、

 俺は“存在しなかったはずの可能性”として、切り離された」


 それは、アキトが“神にならなかった未来”。

 誰にも知られず、誰も救わず、ただひとりで静かに終わった存在――その残響。


◇ ◇ ◇


 「言ってみろ、アキト。

 秩序を壊してまで、お前が守りたいものはなんだ」


 「……俺は……」


 アキトは拳を握る。


 「俺は、“誰かの自由”を守るために戦ってる。

 例えそれが間違ってたとしても、

 自分で選んだ“意味”を手放したくないんだ!」


 その瞬間、空間が震え、鏡のような空間が開いた。


■ 開扉:《時間位相第零階層》

■ 内容:自己との“存在対話”発生、運命確定権を問われる




◇ ◇ ◇


 そして、二人のアキトが激突する。


 一方は“神を否定した者”

 一方は“神にもならなかった者”


 剣がぶつかり、スキルが反響し合い、

 空間すら砕ける“自我同士の戦い”。


■ 特殊演出:存在干渉スキル《ミラーコード・クラッシュ》

→ 効果:自己存在の矛盾を突き破り、真核への到達を促す




 「お前が生きた意味を、俺が超えてみせる!」


 最後の一撃が空間を裂き、すべてを白く染めた。


◇ ◇ ◇


 目を開けると、

 そこには――誰もいなかった。


 パラレルのアキトは、穏やかな顔で消えていた。


■ 結果:並列存在Ver.0消失

→ アキトの“未来”が正式に確定され、時空の揺らぎが一時収束




 「さよなら、“もしもの俺”」


 そして空から、一つの“欠片”が降ってくる。


■ 取得アイテム:《クロノフラクト(時空晶核)》

・説明:過去・未来・可能性すら記録する“時の結晶”

・使用効果:世界の“失われた歴史”に干渉可能

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