神を守る者、鋼の番人

 記録球が砕けたと同時に、地鳴りが響いた。


 遺跡の壁面がゆっくりと開き、そこから現れたのは――


 銀白の巨体。滑らかに動く球体の関節。青白い光を宿した仮面のような顔。


 《神核守護機兵(オートマタ・ガーディアン)》

 ――神の墓標を守る、最終兵器。


「でっけぇ……!」


「完全に起動したわ……アキト、これは“会話不能”よ! 完全自律兵器! 殺る気満々!」


 そして、次の瞬間。


■ 敵性反応確認

■ “神核への接触者”は排除対象

■ 作戦コード:黙示録(アポカリプス)発動




「アカンやつだコレ!!!」


◇ ◇ ◇


 振り下ろされる拳一撃で、床が爆発四散した。


 かろうじて跳躍で避けたが、その余波だけで空間が歪む。


「動きが……重力無視!? 空間圧縮してんのか!?」


「それ、神術レベルよアキトっ!」


 だが、俺も“素人”じゃない。


 心の内に問いかける――


 「《創造神の手》、対神兵装展開可能か?」


■ 対応兵装構築中……

■ 新規生成物:「崩刻鎚〈クラッシュ=オーレ〉」解放




 光の中から現れたのは、白金の大槌(おおづち)。


 重さゼロ、破壊力無限。

 概念上の「硬さ」すら砕く、“神殺しの槌”。


「よし……勝負だ」


◇ ◇ ◇


 轟音が鳴る。


 俺の槌と、番人の腕が激突し、空間がブレた。

 通常攻撃は無効。装甲も意味がない。

 ここは――“存在そのものを削り合う領域”だった。


「《断層裂撃》!」


 崩刻鎚が叩きつけられ、番人の片腕が“消えた”。


 物理的破壊ではない。

 因果そのものを**「なかったことにする」**破壊。


「すげぇなこの武器……やってることチートすぎて引くわ!」


◇ ◇ ◇


 だが、番人は止まらない。


 再生処理。戦術切り替え。

 次は――無音空間フィールド展開。


「くっ……魔力の流れが消えた!? こいつ、魔法封殺領域まで使ってくるのか!」


「アキト、魔力じゃなく“概念そのもの”で動かして!」


「言ってる意味がわかんねぇよエリシアァァ!!」


 でも、不思議と分かる気がした。


 “魔法”じゃない。“存在”で動かせ。


 俺の中にある“無限の器”が――答えた。


「――存在領域、構築開始」

「概念式再起動」

「《因果書換・創造構文展開》――」


■ スキル《因果統制(コード:オリジン)》が発動しました




 その瞬間、俺と番人の周囲に無数の魔法陣が浮かび――


「終わりだ、《存在再編式:零点降臨(ゼロ・フォール)》!!」


 ――世界が一度、真っ白に染まった。


◇ ◇ ◇


 数秒後。

 番人は静かに崩れ、粒子となって空に還っていった。


■ 判定:勝利

■ 神核アクセス権、解放




 そして、神々の中心部――**“神核”**と呼ばれる記憶領域への扉が開いた。


「……アキト、あんた、本当に“人間”なの……?」


「俺にもわかんねぇよ。

でも、わかるのは――こんな世界、放っておけねぇってことだけだ」


 そう、口にした時。


 またひとつ、背後で“誰か”が笑ったような気がした。

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