第4話 竹下さんガチ勢
ギャルと一口に言っても様々な種類がある。
私が最も好きなのは黒ギャルだが、他のギャルも大好きだ。
例えば、白ギャル。
お肌が真っ白だけど、格好いい髪色をしている。
個人的に、スリムな人が多い印象だ。
姉さんが働いている化粧品会社でも、白ギャルっぽい方がいるらしい。きっと、総じて美意識が高いんだろう。
そんなオシャレで格好いい白ギャルが、推しのコスプレをしていた。
なんだここは。桃源郷か?
私はいつの間に俗界を脱したのだろう。
コスプレの完成度も高いし、もう色々最高だ。
アニメのキャラクターの髪色はカラフルなことが多く、アスミちゃんもその例に漏れない。
クールな内面と反対に、赤髪をしていて作中でキャラクター達が通っている高校の制服。これは現実でもありそうなデザインだが、全ての女子生徒のスカート丈がありえないくらいに短い。それはもう、ちょっとした衝撃で下着が見えてしまいそうなくらい。
そんな最高すぎる格好をした白ギャルが目の前にをいる。
「ララでしょ? ねぇ、ララだよね?」
あまりの眼福に、危うく脳みそごと異世界に行ってしまうところだったのを、鹿島さんの声のおかげで戻ってくることができた。
「まぁ……ララだけど、なんでケイがこんなところにいんのよ」
「へっへー。竹下さんとデート!」
「!!!!!」
デート。
その言葉の衝撃は、私を虜にするには充分だった。
え? 友達同士で出かけるのってデートにカウントされるの? もしそうなら、友達代行サービスの代金を上乗せしないと。いくら払えば良いんだろう? 10万円くらい?
「何言ってんの。この人困ってんじゃん。……って竹下さん!?」
「ヒッ」
今まで、鹿島さんにしか認識していなかった佐々山さんが、目を見開いてこちらを見る。
「は、はい。竹下アンです」
「あ。あ。えっと、佐々山ララです。高校の時のクラスメイトなんだけど、覚えてる? 覚えてるわけないよね。私みたいなモブ……。ハハ……」
何故か、自分を下げに下げる佐々山さん。
なんか、私みたいで親近感が湧く。
……いやいや。私みたいなのと似てるなんて佐々山さんに失礼でしょう! 何を勘違いしているんだ。
そんな妄想よりも、悲しい顔をしている佐々山さんに事実を伝えないと。
「モブなんて、とんでもないです! 私にとって佐々山さんはメインキャラですから!」
「……神降臨」
「?」
なんて言ったんだろう。上河内?
宇都宮餃子が買えるサービスエリアの名前が、何故今?
「神降臨! 神降臨! 美人で頭がいいだけじゃなくて優しいなんて! 正に神! ありがたやありがや……!」
「???」
どうしよう。佐々山さんの言っていることが理解できない。
辛うじて分かったのは、上河内って言ったわけではないことくらいだ。
助けを求めるように鹿島さんを見ると、やれやれといった表情をしている。
こんな顔もするんだ。可愛い。
やっぱり美人の黒ギャルを見ると落ち着く。
その黒ギャルからの説明が、以下の通りである。
「ビックリしたよね。でも許してあげて。ララは竹下さんガチ勢だから」
なるほど。分からない。
タケシタサンガチゼイ?
呪文か何かかな?
「要するに、竹下さんのファンなんよ」
「ケイ!」
高校時代の佐々山さんが聞いたことの大声が出た。
私みたいに弱いから出さないのではない。大きな声を出すまでもなく彼女は自分の居場所を構築できる強者だから。
そんな人が、私のファン?
何がなんやら、さっぱりだ。
「……ッ」
顔を真っ赤にして俯く白ギャルコスプレイヤー。
いや、これ要素詰め込みすぎじゃない?
ラノベのキャラだったら作者に物申したいくらいにキャラの濃さを持つ佐々山さんだが、言うまでもなく現実の生きている人間だ。
だから、この状態をエモーいと他人事で見ているわけにもいかない。
でも、私に何ができる?
とにかく、しんどそうな佐々山さんを助けてあげたい。
ただでさえ悪い上に今はパニックになった頭で考えた結果、私は次のような世迷言を口走ってしまった。
「えっと、サイン書きましょうか?」
馬鹿か!
誰がお前のサインなんか欲しがるか! 恥を知れ恥を!
馬鹿すぎる自分に嫌になる。
しかし、佐々山さんは鹿島さんに負けないくらいキラキラな笑顔でこう返してきた。
「良いんですか!?」
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