ギャルと友達になりたい!
ガビ
第1話 ギャルという名の天使
友達代行サービスというホームページに辿り着いたのは、大学の授業を終えて自室でネットサーフィンをしていた時だった。
友達が欲しくて欲しくて仕方がなく、[友達になってくれるサービス]と検索したからだ。
ホームページの説明では、「パワースポットなどの趣味を共に楽しむ」や「テーマパークやショッピングに付き合う」ことができるらしい。
「こ、これだ!」
こんなにも自分の欲望にマッチしていることに感動した、竹下アンは実家の自室でそう叫んだ。
その大声に猛ダッシュで駆けつけてくる足音が響く。
あ。姉さんがくる。
「アンちゃん! 大丈夫!? まだGが出た!? お姉ちゃんも苦手だけど、アンちゃんのためなら頑張るよ!」
昔から過保護な我が姉は、私のためを思って箱ティッシュを持って現れた。
「あ。ごめん姉さん。何でもないから大丈夫だよ」
そう返事しながら、この姉はティッシュでGと戦う気だったのかと戦列と共に尊敬する。
私と違って陽キャで美人な姉を改めて見る。
髪は、今時珍しい綺麗な黒髪ロング。
私の持論で、この王道な髪型は本当の美形でないと許されないというのがあるが、我が姉はそこをクリアしている。
全体的に透明感が半端なく、人を安心させる顔立ちをしている。大人気女優としてテレビに出ていても不思議ではないレベル。
あと、あの……胸が大きい。
それに比べて、妹である私はチンチクリンで、大学進学を機に髪を茶髪に染めてみたが、全然垢抜けなかった。
さらに、結構なコミュ障。
今までできた友達は0人。
今現在じゃないよ。20年間、本当に1人もできたことがないんだ。
同じ遺伝子でこうまで差が出てしまったは、考えるまでもなく努力の差だろう。
人見知りを言い訳に行動を起こさなかった私と、色んなことに興味を持って活動する姉さん。
そりゃ、違いが出て当たり前だ。
その結果、姉さんは大手化粧品会社の営業としてバリバリ働いている。経済的にも余裕があるし、一人暮らししたいだろうに「アンちゃんと離れたくない!」とか言って実家から出ようとしない。
きっと、頼りない妹が心配なのだろう。
全く。優しいにもほどがある。
そんな姉に、これ以上心配かけないためにスマホ画面をポケットに入れて隠す。
「ホントに大丈夫だから」
「……そう? 何かあったら言ってね?」
姉さんは納得いかない様子で部屋を出ていく。
その理由は分かっている。
大丈夫と連呼する奴は大丈夫ではないから。
そう理解はしているが、それ以外に口にするべき言葉が浮かばなかった。
\
3日後。
私は、池袋駅西口公園で友達を待っていた。
1万2000円で雇った、プロの友達を。
約束の時間の40分前に着いてしまい、暇つぶしをしたかったが、緊張のせいでスマホも小説も頭に入ってこない。
無意味に髪をイジイジしながら、友達……ミレイさんを待つ。
友達代行サービスは、性別はもちろん写真を見て個人を指名することもできる。
吟味に吟味を重ねた結果、私は金髪黒ギャルのミレイさんを選んだ。
理由は、完全に私の趣味である。
ギャル。
ボッチはこの人種に苦手意識を持っていることが大半だろうが、私にとっては好印象だった。
だって、話しかけてくれるから。
高校2年生のギャルグループの鹿島さんと佐々山さんと田渕さんは、よく私に話しかけてくれた。
内容は宿題写されてとか、パン買ってきてとかだったけど、声をかけられた時点で私にとって彼女達は天使だ。
雑談とかには恐れ多いから参加できなかったけど、頼み事をしてくれたのさ本当に嬉しかった。
自分が、価値のある人間だと思えるから。
だから、ギャルは好きだ。
そして、ギャルの代名詞である金髪黒ギャルは大好きだ。格好いい。
高校の時の3人は、ギャルではあったけとマイルドなギャルで髪は染めてお化粧もしていたけど日焼けまではしていなかった。
いつか、黒ギャルにお会いしたいと夢見てきたのだ。緊張せずにはいられない。
「あ……。竹下アンって、やっぱりアンタだったか」
引き続き俯いて髪をイジイジしていると、声をかけられた。
ミレイさんかな。
でも、この声、どこかで聞き覚えのあるような……。
「あんまり、こういうので本名使ったら危ないよ」
少し低いけど女の子らしさも保っている、この声。
「……鹿島さん」
「よ。久しぶり」
一生の不覚。
高校時代は白ギャルだったから気づかなかったけと、改めて実物をしっかり見ると、確かに鹿島さんだ。
私に話しかけてくれた数少ない1人である、天使が降臨なさった。
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