第3話 封印されし美少女

 アキトは荒い息をつきながら、焼け焦げた床に膝をついた。


 三体目の“魔鎧獣(デモン・アーマー)”を討伐した直後。【粘着火炎ボム】で弱点の魔核を焼き、【毒刃ナイフ】で急所を裂く――すべて即興の戦闘だった。


「……数が多すぎる。けど、あと……もう少しだ」


《創造庫》の素材も残りわずか。だが、デモン・アーマーからアイテムがドロップした。


【討伐完了:魔鎧獣デモン・アーマー


【経験値 +23000】【素材獲得:解析開始】


《創造庫》が自動で素材を吸収し、脳内に情報ウィンドウが表示される。


 ◆ドロップアイテム一覧:


《魔鎧鋼(まがいこう)》×3個

 →デモン・アーマーの外殻を構成する呪鉄。強靭で、魔力を帯びた打撃にも耐える。

 【用途】:防具強化素材、武器の刃材、魔導装甲の核フレームに使用可。


《呪紋核(じゅもんかく)》×1個(レア)

 →胸部に収められていた魔力制御の中枢。古代呪紋が刻まれている。

 【用途】:魔道具のコア素材。トラップや遠隔操作装置の構成に最適。


《黒緋のマント布》×1枚

 →魔力を通す特殊繊維。高い耐火・耐闇属性を持つ。

 【用途】:特殊防具の布地素材。魔装マントやステルス衣に応用可。


《魔骸片(まがいへん)》×5個

 →砕けた部位から採取された欠片。再利用には加工が必要。

 【用途】:錬成素材。他素材と組み合わせて補助的な強化に使用可能。


 ◆自動生成レシピ案(創造庫提案):


《魔鎧鋼》×2 + 《黒緋のマント布》=【魔鎧装ベスト:ディフェンド+12/闇耐性+】


《呪紋核》 + 《魔宝石》=【遠隔魔雷トラップ:設置型爆雷/対象追跡】


《魔鎧鋼》 + 《火打石》=【衝撃魔剣:切断+スタン効果付与】


 アキトは目を細めた。


「……すげぇ。武器にも罠にも防具にも使える。これだから、ダンジョンはやめられねえな」


 素材を《創造庫》に収めながら、彼は次なる“創造”への準備を始めた。


 この試練区画はまるでクラフト能力の限界試験のようだった。


 ――だが、突破口が見えた。


 奥に進むたび、敵が強くなり、その分アキトは創造で強くなる。奥に進むにつれ魔力濃度が高まり、何かが封じられている気配が強まっていく。


 そして、モンスターを35体倒し、レベル77になった所で――


 カチリ


 封印が、解ける音がした。


 重々しい鉄格子の門が、ひとりでに開いた。


 そこに広がっていたのは、静謐なる監獄の間。

 岩で組まれた牢獄、そこには一つだけ――異様に美しい魔法障壁に囲まれた特別な牢があった。


 アキトは本能で察した。


(この空間……この気配……他の何者とも違う)


 近づいたその先、魔法障壁の向こうにいたのは――


 囚われた一人の女性だった。


 長い銀の髪が光を受けて煌めき、白磁の肌に纏うのは、古の王族を思わせる装飾衣。

 だがその瞳は、燃えるような琥珀色。見る者の心を見透かすような、深い光を宿していた。


 そして、彼女はアキトの姿を見つけるなり――


「……あなたが、『創造の器』を持つ者?」


 その声は、かつて《創造庫》の案内音声として響いていた『凛とした女性の声』と、酷似していた。


「まさか……あんたが……《創造庫》の中枢……?」

「違うわ。私は――《創造庫》の原型、『イレア』と呼ばれた者」


 アキトの背筋が震えた。


 この試練区画に封じられていたのは、スキルの起源そのもの。そして彼女は、古代に実在した錬金の女帝――イレア。


「私の記憶の欠片が、あなたのスキルとして宿ったのね……。なるほど、これも『選定』の一つ……」


「なぜ、ここに囚われている?」


 アキトの問いに、イレアは微笑を浮かべた。


「……私はあまりにも創りすぎたの。神を模した装置、魂を持つ兵器、禁忌の生命。そして世界は私を恐れ、ここに封じたの」

「……バカな。そんなのありえない。今の科学でも出来ないのに。でもそれが、事実なら凄いことだ」

「あなたは、そう言うのね……。面白い人」


 イレアはゆっくりと立ち上がり、魔法障壁に手を当てる。


「この結界を解けるのは、《創造庫》を進化させた者のみ。あなたが、『私の後継者』なら」


 アキトは無言で手を差し出した。


「《創造庫》、コマンド入力――封印解除・コード:イレア」


 魔方陣が煌めき、結界が音を立てて砕け散る。


 ──カシャァァァァァン……


 砕けた光のかけらが舞う中、イレアがゆっくりと歩み寄ってきた。


「ありがとう、アキト。ようやく……外の空気を吸えるわ」


 その微笑みは、千年の孤独を乗り越えた者の、それだった。いや、きっと先史文明の存在。イレアと名乗った銀髪の美少女は手を伸ばして語る。


「さあ、共に行きましょう。あなたの《創造庫》の奥にある世界を変える力を見つけに」


 そして、二人の冒険が始まった。


 創る者と創られし者が交差し、ダンジョンの深淵へと歩みを進める。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る