第46話 決闘を挑まれる

冒険者ギルドに戻った僕はまず、グリフォン討伐の報告をする。次いで盗賊に襲われたので30人返り討ちにしたことを報告して、別の場所に移動して盗賊の死体を広場に取り出して賞金首が入っていないか確かめて貰った。

この時大勢の野次馬がぞろぞろ着いてきた。

武器や盗賊の持ち物は僕の物になるので買い取って貰った。街の武器屋に売ればもっと高く売れるらしいが、面倒くさいのでギルドに一括して売り飛ばした。

これが中古品として初心者に手に入りやすい価格で売れるのだ。


高額な懸賞金がかかった者が複数いたので今回の報酬と売上金は併せて金貨11枚を超えた。1100万ミールを貰ってしまった。


目立ちすぎてしまったようだ。町はずれの広場で人生初の決闘を申し込まれてしまった。あの野次馬の中にいた大男だった。

僕としては弱虫と言われようが構わないので断ろうとしたが、まずいことにサッチャルが僕を迎えに来てたので彼女が勝手に決闘を受けてしまった。夫の決闘の受諾を妻がしたとしても契約がなされたことになるらしい。知らなかった。


「なんで止めなかった?」と聞いたら

「だってあいつテラノのことを侮辱するようなことを言うんだもの許せなかったのよ!」獣人としての誇りが旦那様を侮辱する者を許せないのだと言った。

「テラノが強いのは私が1番良く知っているから少しも心配していないのよ。もう2度とあんな馬鹿が出てこないように力の差を野次馬にも見せつけてやればいいのよ。今後の為にもね」

それもそうかと思ってしまった僕も脳筋だったのか?この世界の常識にどっぷり浸かってしまったのか?ちょっと怖いな




決闘には中立な立場の立会人が必要だということで冒険者ギルドのギルドマスターがかって出てくれた。

誰も止めようとしないのかよ!

それどころかウン十年ぶりの決闘だとお祭り騒ぎだ。

人が殺しあうのがそんなに面白いのか?

それが人間の本性なのか⁉


なにはともあれ決闘の日は明後日の朝10時。王都の中央にあるコロシアムで行われることになった。有料で見物人を入れてどちらが勝つかの賭けも行なわれて、掛け金の4割が決闘に勝った本人にも配分されるそうだ。残りの6割を掛けに勝った人に配分される。もっともそれは胴元が2割を引いた後の残りの金額から計算される。だから胴元はどちらが勝とうが儲ける仕組になっているのだ。

だから胴元は煽りに煽って掛ける人を、掛け金を多くさせようとする。


決闘の相手は筋骨隆々の身長2メートル越えの大男だった。名前は【ゴブキン】というらしい。自分を【剣豪】と名乗っている。世界中旅してこれまで15人の剣客を倒してきたのだという触れ込だ。


対する僕は成長期なのでやっと180㎝に届いたところで、筋肉もまだ完全には付いていない。本人は体も軽くて動きやすい細マッチョだと思っているのだが、観客から見たら頼りなく見えるんだろうな。まあその分相手に掛ける率が高くなるから僕の取り分が多くなるからいいんだけどね。


相手を鑑定すると見掛け倒しのようでろくに魔法も使えないようだ。魔法有りだと一瞬で勝負がつきそうなので攻撃魔法無しで剣技だけ(格闘技は許される)の条件で戦うことにした。(身体強化魔法は許される)

他人から見ると【ゴブキン】に有利な条件に見えるだろう。

これも僕の作戦のうちだ。


決闘当日が来た。コロシアムは超満員だ。

ゴブキンは背中に幅40㎝は有ろうかという大剣を背負ってきていた。

「よく逃げないで来たな。誉めてやろう。しかし日陰のもやしみたいにひょろっとした野郎だな良いのかそんな皮鎧で、俺の剣が当たったら真っ二つになっちまうぞ!」

「心配ご無用。僕がこんな優男だからこそ勝てると思って決闘を申し込んだんだろう?大丈夫、剣が当たらなければどうってことないさ、それよりあんた自分の剣に振り回されて自分の足を切っちまわないように気を付けな」

この2人のやり取りは拡声魔法で会場中の観客の耳に届いている。どっと笑い声が起きた。

「口の減らない野郎だな。それよりも攻撃魔法を使わなくてもよいのか?俺は心が広いからお前だけ攻撃魔法を使っても良いぞ」

「それはどうも。でもこの魔法を見てもそんなこと言えるかな?」


僕は観客席と【ゴブキン】に防御結界を張って中程度の爆裂魔法を空いている場所の地面に放った。

ズドドドーンと大音響を伴って地面がえぐれそこの地面がクレーター状に大穴が開いた。小石や土が結界に当たってバチバチ音を立てている。

見ると【ゴブキン】は真っ青な顔で震えている。


「どうだい?まだ僕が攻撃魔法を使っても良いと言えるかな?」

「ムムム、前言撤回攻撃魔法は禁止だ」

その言葉にほっとした顔をした観客が多数いた。多分【ゴブキン】の勝利に掛けた人たちだろう。


僕はクレーターになってしまった地面を修復する為に、飛び散った土や小石を一旦収納して全てをクレーターに戻した。だが空気を含んでふんわりと盛り上がってしまったので重力魔法でドスンドスンと固めて行く。

適度な固さに戻った。


僕は【ゴブキン】に掛けた結界を解除して1息ついた時、

試合開始の声が聞こえた。


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