第31話 ドラゴン料理
私たちは傷をある程度癒した後、素材を剥ぎ取るためにドラゴンの死体へやってきた。
「でかいなぁ、素材全部集めても、おいておく場所がないね」
「そうねぇ、かといってここに置いとくわけにもいかないでしょう?」
死体になったから改めて図ってみたけどこのドラゴン、全長が10mくらいある。
この大きさだと何をするにしても困らない量だけど、その前に腐っちゃいそうだ。
「何かいい案あるかしら」
いい案、いい案。
この巨体を納めきれるぐらいに大きくてなおかつ氷室みたいに腐らないような環境でしょ?うーん、いい案内かなぁ。
「もうさ、ないなら作らない?」
「作るって、保管場所を?」
「ほら一応作ったじゃん爆弾。あれ使えばいい感じにできないかな。今持ってるでしょ?」
なにかの役に立つかと思って一応作った強化爆弾。威力は試してないからわからないけどそれなりに大きな穴を作れるぐらいには強力なはずだし。
それに日常生活で持っておくにはあまりにも危ないので早めに処理したい。
「そうよねぇ、場所は?どっかいいとこある?」
「もう山でいいんじゃない?爆弾で穴開けて、で柱で強化して洞穴作ってさ。それで氷室みたいにしたら、いい感じじゃない?」
ここら辺は人が来ることは少ないし、山もカモフラージュすれば誰も見つけられないだろう。
「じゃあ決まりね。さっさと運びましょ」
「よし、そうしよっか」
私たちはドラゴンを足、羽、頭といった大まかなパーツに分け、台車で運んで行った。
解体できるのかは不安だったけど、ドラゴンが固いのは本体に使われた魔法とスキルによるものなので、死んだあとは案外簡単に切ることができた。とはいえミスリルの剣が何回も刃こぼれするぐらいには固かったのでドラゴン末恐ろしだ。
台車に乗せて少しずつ近くの山に運ぶ。運ぶうちに火がどんどん暮れてきて到着するころには真っ暗になっていた。これは、徹夜案件だな。
「場所は......ここら辺かしら」
「どこでもいいんじゃないの?」
「ばか、場所によっては私たちが埋もれることになるんだから。いいから黙ってなさい。ここは私がやるから」
ソフィーが慎重に爆破予定地に爆弾を埋めていく。私にはよくわからないが地質学的ななにかがあるのだろう。なんにもわからないので私は黙っておくことにした。
数分後、壮大な爆破音が響き、それなりに大きな横穴が出来上がった。
斜めに向かって深くなっているので、半地下に近い。あとは木材で補強するだけ。
ドラゴン退治で体はへとへとだったがなんとか三時間ほどで完成させた。ドラゴン退治のために飲んでおいた身体能力強化のポーションの効果が残っていなければ朝になっても終わってなかっただろう。
「やぁーっと終わったわね」
「疲れたねー、お風呂入りたい。お腹もすいたし」
「じゃあご飯にしましょうか。ちょうどいい具材もあるし」
「え、なに。いやな予感するけど」
「喜びなさいノルン!今日はドラゴン料理三昧よ!」
ソフィーはとても喜んでいるけど、ドラゴンの肉って料理に使えるのかなぁ。なんか繊維がっしりで固そうだし、ソフィーには申し訳ないけど、美味しくないと思う。
何を言ったって私は料理ができないし、おとなしくソフィーの料理が終わるまで、暇をつぶすことにした。
「あ、そこらへんに食べられる草もあるから。とってきて頂戴」
暇じゃなくなった。
数十分経って、私はソフィーに言い渡された草を集めて帰ってきた。
なんだかいい匂いがする、そういえば何を作るか聞いてなかったけど、この匂いならスープとかかなぁ。
「ソフィー、持ってきたよー」
「ありがとう、そこに置いておいて頂戴」
言われた通りに草を持っていく。よくわからないけど、これがあるだけで料理がとてもおいしくなるらしい。香辛料みたいなものだろうか、明らかに見たことあるような見た目の草もあったし。
「なに作ってるの?」
「これは、ドラゴンのテールスープね。ちょっと癖が強いから、このマタリヤ草がほしかったの。もうすぐ出来上がるから、食器を作っておいて頂戴」
なんだか不安になる匂いだけど、何が出てきても大人しく食べよう。そう決意するぐらい、お腹ペコペコだ。
私が木から食器を作り終わるころに、ようやく完成したのかソフィーが大きな寸動とフライパンを持ってきた。
「さ、食べるわよ!私特製ドラゴンのテールスープ、そしてドラゴンステーキ!」
「ゴクッ、美味しそうだね。なんだか匂いもいいし。もう我慢できないしいただくね?いただきまーす!」
まずは一口スープを頂く。
冷えていた体に温かい液体がしみ込んでくる。味付けはドラゴンの肉の出汁で十分コクが出ているため塩のみのシンプルさ。だがそれがいい、それでいい。続いて具材に手を出す。まずは一番怖いドラゴンテールから。
一口噛んでみるとジャーキーのようなしっかりした肉の触感と圧倒的なうま味!たまらずもう一口、もう一口と食べ進め、気づけばスープを完飲していた。
「ほぁぁ、すごい......」
「ふふ、美味しいみたいでよかったわ。ほら、スープのお替りもあるから」
ソフィーがそう言ってまたよそってくれる。
次はステーキ。厚さは、五センチくらいだろうか。絶対においしいに決まってるんだから我慢できるわけないよね。いただきます!
一口頂く。
おいしい!なんだろう。触感としては牛に近いけど、ちょっと歯ごたえ強めかな。
スープに溶けていたうま味とか油が、焼くことで閉じこめられて一気に口の中で爆発する。噛む度に味がどんどん出てくる。本当においしい!
あぁー、お米が欲しいよー!こんなにおいしいのに米がないとか元日本人としては拷問に近いよ!
「どう?おいしいでしょう」
「うん!最高!もうなんというか肉のうまみというか!すごくすっごくおいしいの!」
「まだまだドラゴンの肉はあるから、お替りいーっぱいしていいんだからね」
私はソフィーの言葉に甘えて、どんどんドラゴンの肉を食べた。人生で一番おいしい味だったのは間違いない。
お腹いっぱいになって、錬成したお湯で体を拭いた私たちは、地面に寝袋を敷いて二人川の字で深い眠りについた。夢をみることもないくらい、深い深い眠りを。
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