第28話 対策

「なるほど、一か月後にドラゴンが......」


「そうなの、嘘かと思うかもしれないけど、信じてほしい。そして、私と一緒に戦ってほしいの」


 通算三十回の死に戻りを乗り越えて、今私はソフィーの目の前にいる。

 もう隠し事はなしで、全てを打ち明けた。


「ええもちろんよ。でもその前に......」


 ソフィーが私を手繰り寄せてそっと抱きしめる。

 ふわっとした温かいぬくもりが私を包み込む。


「よく頑張ったわね、ノルン」


 そう言うと、ソフィーはさらに固く私を抱きしめる。私は、その言葉だけで、涙がぼろぼろとこぼれていた。

 数分しか抱きしめていなかったのだろうけど、私には数時間に感じるほど至福の時間を味わう。すると、活力が湧いてきた。


「もう、大丈夫。さっそく作戦会議をしよう」


「そうね、今黒板を持ってくるから、ちょっと待っててね」


 そして対ドラゴンの対策会議が始まった。

 私が数十回挑んだ結果足りなかったものをどんどんと挙げていって、それをソフィーがまとめる。

 一時間がたつ頃には、黒板がいっぱいになるくらい書き込まれていた。


「ま、こんなところかしらね。足りないのは、私たちの身体能力、より強力な武器、それと道具」


「うん、これでいいと思う」


「身体能力は、まぁ鍛えるしかないわね。私がメニューを作っておくから一緒に頑張るわよ」

「そして、強力な武器だけど、ノルン、あてはあるの?」


「うん、今から十日ほど後に商館にアダマンタイトが入荷するから、それを狙えば」


「お金は......まぁちょっと強めの節約をすれば、武器一個分ぐらいは買えるかしらね。しばらくは質素な生活になるけど、我慢するわよ」


「了解、それで錬金道具なんだけど」


「対ドラゴン用の道具なんて思いつかないからノルン、こっちは完全に任せたわよ。その分錬金や素材集めは私がやるわ」


「だいぶ固まってきたね」


「そうね、善は急げというし、さっそく錬金術用の素材を集めに行くわよ」


 私たちはさっそく商館に行って素材集めを始めた。

 ハーピーの隠し羽、セイレーンの声帯、使えそうなものを十個ほど買いだして、私たちは家に帰った。


「最初に作るのは、なんにするの?」


「うーん、風よけの鈴にしようかな。便利だけど、時間がかかるし」


「そうね、じゃあ私は手伝うから、始めましょう」


 さっそく錬金術を始める。

 まずはロックバードの唾液を溶かした水溶液を沸騰させて風のエキスを抽出、そしてそれを錬金釜に投入、釜の中身が風属性になったのでそこにすかさずハーピーの隠し羽を一つ、首狩り兎の足を三つほど投入。

 ここで入れる物質によって効果が変わってくる。ハーピーの隠し羽は効果時間、首狩り兎の足は効果を向上させる。

 ただ入れすぎても私たちの今の技術では大して意味がないためそれなりの品質のものを二つ作る。

 そうして出来上がった壺の中身に鈴を三日間浸す。

 そしたら風よけの鈴、一段階目の完成だ。ここからなんどもこの過程を繰り返すことで私たちでもより強力なものを作れる。

 時間がかかるというのはこういう意味だったのだ。作ること自体はそんなに大変じゃない。だが実用的な段階まで行くには積み重ねが必要というだけだった。


「よし、あとは放置するだけだね」


「そうね、今日はもう遅いし、少しだけトレーニングをして寝るわよ。今日は軽くだけど、明日からはビシバシ行くから、覚悟なさい」


 ソフィーは少しだけといったけど、少しというにはあまりにも高負荷で、あまりの辛さにその日は気絶するように眠っていった。

 明日からはもっと厳しくなるらしいけど、私生き残れるかな。そんな心配が頭をよぎった。

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