花天月地【第26話 朔望】
七海ポルカ
第1話
ここ数日、ずっと体調を崩していた。
その日も朝一度目覚めたが起き上がることが出来ず、とにかくずっと同じ場所で眠っているのはよくないと、寝台から降りてフラフラと長椅子のところまで移動すると、手に掴んだ毛布に包まって横になった。
隣は
いつも静かだが、その日も長椅子に横になってうとうとしていると、何か話し声が聞こえてきた。
訪問者のようだ。
まだ早い時間なのに。
こんな時間に客など、珍しい。
少し思考を動かしたけどあまり考えられなかった。
話している一人は司馬懿だ。
彼の話し方は覚えた。
……もう一人は、ここは司馬懿の王宮における私邸であり、彼はあまりここに人を呼びたがらないから、いつも通り弟の
司馬孚も兄に似ていない穏やかな喋り方をする男だったが、彼とも少し違うように聞こえた。
しかし単純な仕事の話をしている感じもしない。
その場合、司馬懿はもっと端的に明確に話すから、仕事の話をしているのだなと内容が分からなくとも伝わってくるのだ。
何かをただ、話している。
静かな気配としてそれが伝わってくる。
男であることは分かった。女官や、侍女ではない。
穏やかな話し方だ。声も。
窓から風が入ってくる。
遠くに音だけとして聞いていた声が近付いて来た。
「私が呼ばれた理由が知りたいのですが」
そう、静かに尋ねる声が聞こえた。
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